専門委員会成果物

Iqbal/Twombly判決の基準の下,訴状の請求事項の記載不十分の訴えを覆した事例

CAFC判決 2018年5月1日
Disc Disease Solutions Inc. v. VGH Solutions, Inc., et al.

[経緯]

  2015年11月30日に,Disc Disease Solutions Inc.(D社)は,体幹装具に関する特許8,012,113と,空気拡張管を有さない蛇腹バンドとその製法に関する特許7,618,509との計2件の特許権の侵害を理由に,VGH Solutions, Inc.(V社)を地裁に提訴した。D社はその訴状において,V社の侵害被疑製品を名称と写真によって特定し,侵害被疑製品が当該2件の特許の少なくとも1つのクレームの全構成要件を満たす文言侵害又は均等侵害のいずれかであると主張した。
 しかし,翌日12月1日に,連邦民事訴訟規則の規則84と直接侵害を主張する訴状の記載例のForm 18が廃止された。廃止後,訴状に記載する直接侵害の請求事項については,Iqbal/Twombly判決の基準が適用され,原告が救済を受けられるもっともらしい理由として,侵害被疑製品がどう原告の特許を侵害しているかの説明を詳細に示すことが必要となった。
 V社はD社の訴状の記載がIqbal/Twombly判決の基準に満たないため,訴状を棄却する申立を行い,地裁はV社の申立を認めた。
 D社は地裁に対し,訴状提出日にForm 18が有効であったので,Iqbal/Twombly判決の基準は適用されないと再審理の申立を行った。しかしながら,地裁に申立を否定されたので,D社はCAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,訴状提出日にForm 18が有効であったか否かを争点にせず,今回のケースはシンプルな技術であり,D社の訴状の記載が,十分にV社に原告の特許を侵害している説明を詳細に供給しているため,D社の申立はIqbal/ Twombly判決の基準を満たしているとして,地裁の判決を覆した。

(桑野 陽一郎)

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