専門委員会成果物

部分的手続開始決定がされた当事者系レビューについて,SAS最高裁判決後に,PTABへ差し戻す必要がないと控訴審で判断した事例

CAFC判決 2018年6月7日
PGS Geophysical AS v. Iancu

[経緯]

 WesternGeco LLC(W社)は,PGS Geophysical AS(P社)が保有する,海底の地質調査方法に関する特許6,906,981(’981特許)について当事者系レビュー(Inter partes review(IPR)) を請願した。特許審判部(PTAB)は,申請された無効理由及びクレームのうち,その一部のみについて審理開始(部分的手続開始)の決定をした。PTABは,’981特許の一部クレームは複数の 引用文献から自明であり特許性を欠く旨の決定をした。
 P社は,この決定を不服とし,CAFCに控訴した。
 その後,2018年4月24日のSAS最高裁判決(SAS Institute, Inc. v. Iancu, 138 S. Ct. 1348(2018))において,PTABはIPRの請願書に記載された全てのクレーム及び無効理由について 審理しなければならないと判断されていた。  

[CAFCの判断]

 CAFCは,PTABの決定を支持し,’981特許の一部クレームは自明であると判断した。
 その過程で,CAFCは,SAS最高裁判決を踏まえ,部分的手続開始がされたIPRの決定に対するP社の控訴について,CAFCが判断する権限を有するか検討した。CAFCは,PTABの部分的手続開始は 法的に誤りだったとの判断を示す一方,IPRにおける手続開始決定及び最終決定は確定であり,行政手続法(Administrative Procedure Act)における確定要件(Finality Requirement)を 満たすと判断した。そして,法的な誤りがあっても確定要件を欠くとは限らないとして,CAFCは本控訴について判断する権限を有するとした。
 また,法的に誤りのあるPTABの部分的手続開始決定について,CAFCは自発的に対処する権限を持たないとも判断した。そして,本控訴については,P社及びW社の両当事者からSAS最高裁判決を 踏まえた審理を求める要求がなかったため,手続開始決定がされなかったクレーム及び無効理由について,PTABへ差し戻して審理する必要はないと判断した。

(長田 達朗)

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