専門委員会成果物

当事者が別である同時係属中の案件に対し,特許無効に関する争点効を自発的に適用すると判断した事例

CAFC判決 2018年5月23日
XY, LLC v. Trans Ova Genetics, L.C.

[経緯]

 Trans Ova Genetics, L.C.(T社)は,XY, LLC(X社)の保有する特許の実施についてX社とライセンス契約を締結した。X社は,契約違反を理由に契約を終了するとしてT社と交渉したが, 交渉では解決できなかった。
 その結果,X社は,T社による契約違反及び特許6件の侵害を理由に地裁に提訴した。これに対し,T社は,特許無効を主張した。地裁は,T社による契約違反があり,かつ,特許6件は全て 有効であるとして,T社による故意侵害を認め,T社によるロイヤリティ支払いを認めた。両当事者は,地裁判決を不服として控訴した。
 また,以上の事件とは別に,X社がT社を訴えた6件の特許のうちの1件に対し,ABS Global, Inc.が当事者系レビュー(Inter partes review(IPR))を請願した。IPRにおいて特許審判部 (PTAB)は,T社の特許が無効であると決定した。この決定に対し,X社が控訴し,2018年5月23日CAFCはX社の特許が無効であるとしてPTABの判断を支持した。

[CAFCの判断]

 IPRの決定を支持したCAFC判決と同日に,T社の侵害訴訟についてもCAFCの判決がなされた。ここで,CAFCは,IPRの決定を支持したCAFCの判決が争点効を有すると判断した。すなわち,CAFCは, X社が,今後のどの手続きにおいてもIPR及びその控訴審で無効と判断された特許に基づき主張することはできないと判断した。争点効に関し,CAFCは,判断の矛盾が発生した場合に行政機関の決定が 地裁の決定を変えるのではなく,地裁及びCAFCのいずれであろうと無効決定の支持が係属中又は同時係属中の全ての案件に対して争点効を有すると述べた。
 しかし,侵害訴訟の控訴審担当判事の1人であるNewman判事は,以上のCAFCパネルの多数判決に対して反対している。Newman判事は,IPR及びその控訴審については侵害訴訟と当事者が一致しておらず, かつ,争点効に関する規定及び一般原則に違反するとして,CAFCが争点効を自発的に適用すべきではないと述べた。

(伊佐治 辰昭)

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