専門委員会成果物

PTABの新規性欠如による無効判断が,最も広い合理的解釈の基準に照らして不当に広くクレーム文言を解釈したことに基づくものであるとして,PTABの無効判断を棄却した事例

CAFC判決 2018年7月13日
TF3 Limited v. Tre Milano, LLC

[経緯]

 Tre Milano, LLCは,TF3 Limited(T社)が保有する特許8,651,118(’118特許)に対して,当事者系レビュー(Inter Partes Review(IPR))を請求した。問題となった特許は,自動で毛髪を カールさせるヘアースタイリング装置に関するものである。IPRにおいて,PTABは,特許4,148,330(Gnaga)および日本特許出願61-10102(Hoshino)の2つの引例から,’118特許に係る発明は 新規性が無く,無効であると判断した。
 T社は,PTABの新規性欠如による無効審決を不服とし,CAFCに控訴した。 

[CAFCの判断]

 CAFCは,PTABの判断が誤ったクレーム解釈に基づくものであるとして,PTABの判断を棄却した。
 CAFCは,最も広い合理的解釈の基準の下では,明細書と矛盾するクレーム解釈は合理的ではないと述べた。その上で,PTABが採用したクレーム解釈は,明細書の記載範囲を超えてクレーム範囲を 拡張するものであり,明細書の記載と矛盾すると判断した。
 ’118特許の明細書では,クレーム文言と類似する表現が,略語「i.e.」を使用してさらに説明されていた。この点に関して,CAFCは,略語「i.e.」が,参照する用語を略語「i.e.」に続く 説明によって定義するために使用され,明細書において一貫してそのように定義されている場合,クレーム範囲はそのように限定解釈されるべきであるとして,略語「i.e.」が限定を意味しない というPTABの主張は誤りであると判断した。
 CAFCは,PTABの新規性欠如による無効審決が,明細書に記載の範囲を超えて不当に広く解釈したクレーム範囲に基づくものであり,正確なクレーム解釈の範囲では,新規性があると結論付けた。

(淵上 良恵)

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