専門委員会成果物

連邦官報にリンクが記載されたウェブサイト上に置かれた資料に当業者は公的にアクセス可能であったとして,特許は自明と判断した特許審判部の審決をCAFCが支持した事例

CAFC判決 2018年7月13日
Jazz Pharmaceuticals, Inc. v. Amneal Pharmaceuticals, LLC.

[経緯]

 Jazz Pharmaceuticals Inc.(J社)は所定の薬剤の処方箋を追跡する薬剤分配システムに関する特許7,668,730(’730特許)を保有する。Amneal Pharmaceuticals, LLC.(A社)が,’730特許等を 対象とする当事者系レビュー(Inter Partes Review;IPR)を請求したところ,特許審判部(PTAB)は,連邦官報の通知にリンクが記載された米国食品医薬品局(FDA)のウェブサイト上に掲載された 資料を先行技術と認定し,自明性を理由として’730特許等の一部のクレームを無効と判断する審決を下した。これに対し,J社が審決を不服としてCAFCに控訴した。   

[CAFCの判断]

 CAFCは,以下の理由によりJ社の主張を退け,自明性に関するPTABの判断を支持した。
 争点の1つは,先行技術とした資料への公的アクセス可能性であった。この資料は,FDAが連邦官報の通知を通じて会議を告知し,公開された会議に関するものである。J社は,連邦官報による 擬制告知を先行技術の公的アクセス可能性とみなすことは誤りであるため,この資料を先行技術とすることに基づいたPTABの審決は取り下げられるべきと主張した。これに対し,CAFCは,この 通知に記載されたFDAのウェブサイトへのリンク先で会議前に会議資料が掲示され,会議後に議事録等が掲示されたことと,通知にはウェブサイト上の資料へのアクセス方法に関する具体的な 指示が記載されていたことなどから,公的にアクセス可能であったと判断した。また,検索可能性や索引付けは,参照情報が102条(b)に基づく刊行物としての資格を得るために必ずしも 必要ではないと示した。本件では,当業者への告知が十分になされた通知を介した資料であったこと,“特許出願日の1年前”より2ヶ月以上前にオンラインで利用可能であったこと, パブリックドメインソースにより配布され秘密情報ではなかったこと,などから本資料は公的にアクセス可能な刊行物であるとして,この資料を先行技術としたPTABの判断を支持した。
 また,自明性に関して,J社はPTABの一部の決定に矛盾があること,組合せの動機付けを示す事実認定が欠けていることを主張したが,そのような事実は認められないとして,CAFCは,特許は 自明とするPTABの判断を支持した。

(今村 隆寛)

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