専門委員会成果物

先行技術文献がクレームの要素を内在的に開示していないと判断した事例

CAFC判決 2018年7月13日
Endo Pharmaceuticals Solutions, Inc., et al. v. Custopharm Inc.

[経緯]

 Endo Pharmaceuticals Solutions, Inc.(E社)は,テストステロンウンデカン酸エステルの新薬申請を行って承認されており,Bayer Intellectual Property GmbH and Bayer Pharma AG(B社)は, 承認された該新薬に関する特許7,718,640(’640特許)および特許8,338,395(’395特許)を有していた。
 一方,Custopharm Inc.(C社)は,該新薬のジェネリック医薬品の新薬申請を行った。これに対して,E社とB社は,C社に対する侵害訴訟を地裁に提起した。C社は,侵害に関しE社とB社の 主張を認めたものの,’640特許および’395特許は無効であると主張した。
 具体的には,’640特許および’395特許のクレームの重要な要素の一つとして,ヒマシ油と共溶媒から構成される賦形剤が用いられることが挙げられるが,C社は,’640特許および’395特許の 優先日より後に公表された文献Saadによれば,’640特許および’395特許に記載された先行技術文献に記載の賦形剤は40%のヒマシ油と60%の共溶媒から構成されることが開示されている,と主張した。 このことから,C社は,’640特許および’395特許に記載された先行技術文献がヒマシ油と共溶媒から構成される賦形剤を内在的に開示していることになるとして,’640特許および’395特許は無効で あると主張した。
 地裁は,’640特許および’395特許の先行技術文献の記載から賦形剤の組成を特定できることをC社は立証していない,と判決した。C社は,これを不服として控訴した。  

[CAFCの判断]

 ’640特許および’395特許に記載された先行技術文献に記載の薬物動態性能プロファイルが,当時開示のない組成である40%のヒマシ油と60%の共溶媒から構成される賦形剤を用いることのみによって 実現できることを,C社は証明していない。
 すなわち,C社は,’640特許および’395特許の先行技術文献の記載から当業者が賦形剤の組成を特定できることを立証していない。そのため,クレームに対する地裁による判決を支持するとした。

(大沢 真一)

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