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専門委員会成果物
特許法145条に基づく審決取消訴訟において，訴訟当事者が自身の弁護士費用を支払うべき，とした地裁判決をCAFCが支持した事例
CAFC判決 2018年７月27日NantKwest, Inc. v. Andrei Iancu
［経緯］
NantKwest, Inc.（Ｎ社）は，ナチュラルキラー細胞を利用したがん治療方法に関する特許出願の特許出願人であり，当該特許出願は，特許審判部（PTAB）により，審査官の拒絶理由を支持する拒絶審決を受けた。Ｎ社はこの審決を不服として，特許法145条に基づく審決取消訴訟（CAFCではなく，バージニア東部地区連邦地裁に提起する民事訴訟）を地裁に提起した。訴訟終結後，USPTOは特許法145条に基づき手続き費用（弁護士費用と鑑定人費用）の返還を求める申し立てを行ったが，地裁はＮ社に対し鑑定人費用の返還のみを命じ，弁護士費用の返還については却下した。
USPTOはこの決定を不服として，CAFCに控訴した。CAFCパネルにおいては，地裁の判断を却下し，Ｎ社に弁護士費用の返還を命じる判決を下したが，CAFCは自発的に大法廷の審議へと移行した。
多数派は，アメリカにおける法学の「根本原理」である「アメリカンルール」においては，「勝っても負けても，訴訟当事者が自身の弁護士費用を支払う」こととなっており，ここから逸脱するためには，法律に「具体的かつ明示的な」表現が記されていなければならないとした。しかし，�‘探�法145条にはそのような表現はなく，「費用」に「弁護士費用」が 含まれるかどうかは「不明」であること，��他の多くの法律（例：連邦倒産法363条等）において「費用」と「弁護士費用」の用語が分かれて記載されており，連邦議会が「費用」に「弁護士費用」が含まれないと理解していることが読み取れることから，特許法145条の「費用」に「弁護士費用」は含まれないと判断した。
一方少数派は，USPTOの弁護士がUSPTO内部の弁護士であることに言及し，USPTOが「弁護士が本訴訟を担当することにより，他の仕事を行うことができなかったことに対する費用」を求めていることから，これは「弁護士費用」ではなく「人件費」であるとしている。そして，�‘探�法145条が制定されるより前の1836年特許法の条項において，連邦議会は「費用」が「給与」を含むと解釈していたこと，�◆嵌駘僉廚猟名錣琉嫐�として「雇用に使用するもの」が含まれることから，特許法145条の「費用」に「弁護士費用」は含まれると主張した。
USPTOはこの決定を不服として，CAFCに控訴した。CAFCパネルにおいては，地裁の判断を却下し，Ｎ社に弁護士費用の返還を命じる判決を下したが，CAFCは自発的に大法廷の審議へと移行した。
［CAFCの判断］
特許法145条では「全ての手続き費用（expenses）は出願人が支払う」と定められているが，CAFC大法廷は多数決（７対４）により，地裁の判断を支持し，弁護士費用を返還 する必要はないとする判決を下した。多数派は，アメリカにおける法学の「根本原理」である「アメリカンルール」においては，「勝っても負けても，訴訟当事者が自身の弁護士費用を支払う」こととなっており，ここから逸脱するためには，法律に「具体的かつ明示的な」表現が記されていなければならないとした。しかし，�‘探�法145条にはそのような表現はなく，「費用」に「弁護士費用」が 含まれるかどうかは「不明」であること，��他の多くの法律（例：連邦倒産法363条等）において「費用」と「弁護士費用」の用語が分かれて記載されており，連邦議会が「費用」に「弁護士費用」が含まれないと理解していることが読み取れることから，特許法145条の「費用」に「弁護士費用」は含まれないと判断した。
一方少数派は，USPTOの弁護士がUSPTO内部の弁護士であることに言及し，USPTOが「弁護士が本訴訟を担当することにより，他の仕事を行うことができなかったことに対する費用」を求めていることから，これは「弁護士費用」ではなく「人件費」であるとしている。そして，�‘探�法145条が制定されるより前の1836年特許法の条項において，連邦議会は「費用」が「給与」を含むと解釈していたこと，�◆嵌駘僉廚猟名錣琉嫐�として「雇用に使用するもの」が含まれることから，特許法145条の「費用」に「弁護士費用」は含まれると主張した。
（旭 伸隆）
