専門委員会成果物

特定の対象者にのみに頒布された非特許文献が公共に利用可能と判断された事例

CAFC判決 2018年7月27日
GoPro, Inc. v. Contour IP Holding LLC

[経緯]

 Contour IP Holding LLC(C社)は,アクションスポーツカメラ又はカムコーダーに関する,特許8,890,954(’954特許)及び特許8,896,694(’694特許)を保有している。
 GoPro, Inc.(G社)は,自社が展示会にて頒布した販売カタログに記載されたデジタルカメラに基づき,’954特許及び’694特許は自明であるとして,当事者系レビュー (Inter partes review(IPR))を請求した。これにあたり,G社は従業員の宣誓書を提出し,当該販売カタログは,約150のベンダーと1,000人以上の出席者が参加する展示会 にて公開されたものであり,従って特許法102条(b)に規定する刊行物に該当する旨を主張した。
 これに対しC社は,当該展示会は販売業者やディーラーに公開されており,一般に公開されているものではないので,当該販売カタログは公衆には利用可能でなかったとして,特許法102条(b)に規定する刊行物は該当せず,先行文献には当たらない旨を主張した。
 IPRにおいて特許審判部(PTAB)は,G社がC社の主張に対して,当該販売カタログが一般に広まっていたことを示すことが出来なかったことから,当該販売カタログは先行文献とは認められず,自明とは言えない旨の判断をした。
 G社はこれを不服として,CAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,PTABが公衆の利用可能性について狭く解釈していると判断した。具体的にはPTABは,会議等で頒布された資料における公衆の利用可能性の判断要素である,ターゲット層の専門性の観点のみで判断しているとした。そして,CAFCは以下のように述べた。
 確かにターゲット層の専門性は公衆の利用可能性を判断する要素ではあるものの,それのみを以って判断されるものではなく,展示会も製品の宣伝や開発のために行うもので あって,アクションカメラに関心を持つ当業者であれば,展示会に参加するのであるし,G社も展示会においては当該販売カタログを一般に頒布しており,特に制限は行って いなかったのであるから,展示会は会議等と区別されるものではない。従って,当該販売カタログは先行文献として考慮し,またG社の特許性が無い旨の主張について評価 するべきである。
 以上により,CAFCは,PTABの決定を棄却し,差し戻した。

(舟津 孝明)

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