専門委員会成果物

移行句の記載がないクレームにおいてもクレーム文言がプリアンブルに含まれると判断した事例

CAFC判決 2018年11月6日
Acceleration Bay, LLC v. Activision Blizzard, Inc., et al.

[経緯]

 Activision Blizzard, Inc.はAcceleration Bay, LLC(A社)が保有する放送技術に関する2件の特許6,701,344(’344特許),特許6,714,966(’966特許)に対して 当事者系レビュー(Inter partes review(IPR))を請求した。
 IPRにおいて,特許審判部(PTAB)は,’344特許のクレーム中の文言“game environment”及び’966特許のクレーム中の文言“information delivery service”は クレームのプリアンブルに含まれており,権利範囲を実質的に限定するものではないとして,’344特許及び’966特許のクレームは従来文献に基づき無効であると決定した。
 A社は,PTABの決定に対し控訴し,’344特許及び’966特許のクレームにはプリアンブルを表現する為の移行句が含まれていないことを理由として,クレーム文言“game environment” 及び“information delivery service”はクレームの本体部に含まれるものであり,権利範囲を限定していると主張した。    

[CAFCの判断]

 CAFCは,PTABによるクレーム文言の判断に誤りはなかったとして,PTABの決定を支持した。
 CAFCは,クレームが典型的にプリアンブル,移行句,及び,本体部の3つの部分を含むことを前提として,移行句の記載がないA社の不十分なクレームドラフティングは 権利範囲に混乱を招く言い訳にはならず,’344特許及び’966特許のクレームにおいてクレーム文言“game environment”及び“information delivery service”はプリアンブルに 含まれると判断した。そのうえで,CAFCは,クレーム文言“game environment”及び“information delivery service”は単にクレームの使用意図を示すものに過ぎず,実質的に 権利範囲を限定するものではないと判断した。
 さらに,CAFCは,このようなクレームの本体部とプリアンブルとを明確にする為の移行句の記載がない,不十分なクレームドラフティングを避けるよう特許権者へ注意を促した。

(伊佐治 辰昭)

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