専門委員会成果物

コンピュータのソフトウェアのライセンス認証方法に関する特許が特許適格性を有すると判断した事例

CAFC判決 2018年11月16日
Ancora Technologies, Inc. v. HTC America, Inc., et al.

[経緯]

 Ancora Technologies, Inc.(A社)は,コンピュータのソフトウェアのライセンス認証方法に関する特許6,411,941(’941特許)の侵害を理由に,HTC America, Inc.(H社)らを 地裁に提訴した。H社は,地裁に対し’941特許が特許法101条の特許適格性を有さないことを理由とする訴え却下の申し立てを行い,特許審判部(PTAB)にビジネス方法特許 (Covered Business Method(CBM))レビューを請求した。PTABは’941特許がCBMレビューの対象から除外されている「技術的発明」に該当するとして請求を却下した。一方で, 地裁は,Alice最高裁判決(Alice Corp. Pty Ltd. v. CLS Bank International, 134 S. Ct. 2347(2014))の2段階テストを適用し,’941特許が特許適格性を有さないとして, H社の申し立てを認める判決を下した。これに対し,A社が判決を不服としてCAFCに控訴した。          

[CAFCの判断]

 CAFCは,地裁の判断を誤りとして,地裁の判決を棄却し,地裁に差し戻した。
 ’941特許は,Basic Input Output System(BIOS)のメモリ領域に保存されたライセンスレコードを使って,ソフトウェアの動作を認証する発明である。CAFCは, 従来用いられないBIOSのメモリ領域を用いることで,ハッキングを困難にし,セキュリティを向上させることは,非抽象的なコンピュータの機能の改善に当たること, ソフトウェアのプログラムとは区別されたBIOSのメモリ領域にライセンスレコードが保存されていることで機能改善を実現する方法が明確に請求項で特定されていること, ハッキングを困難にするBIOS特有の特徴によってコンピュータの脆弱性を改善していること等から,Alice判決の2段階テストの第1ステップである「対象クレームが抽象的アイディアを規定するか」に該当しないとした。従って,’941特許が特許適格性を有すると判断した。

(今村 隆寛)

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