専門委員会成果物

当事者系レビューの手続において特許審判部が独自に行ったクレーム解釈は適法であると判断した事例

CAFC判決 2018年11月16日
Hamilton Beach Brands, Inc. v. F’Real Foods, LLC

[経緯]

 Hamilton Beach Brands, Inc.(H社)は,F’Real Foods, LLC(F社)が保有する特許7,520,662のうち,第21請求項に係る発明は複数の先行技術文献から自明であるとして, 特許審判部(PTAB)に当事者系レビュー(Inter partes review(IPR))を申請した。
 当該請求項に係る発明は,ミキシング/ブレンディング装置内のスプラッシュシールドに向けて予め固定されたノズルから洗浄液を吹き付け,ミキシング等の操作を行うたびに 装置を分解することなく自動で洗浄を行う方法に関するものである。
 PTABは,IPRにおいてF社が提示したクレーム解釈と類似するが完全には一致しないクレーム解釈を行い,当該請求項に係る発明は非自明であるとして,特許を維持する旨の判断を下した。
 H社は,IPRの手続においてPTABが独自に行ったクレーム解釈は,当事者のいずれもが提示や予測をしなかったものであり,かつ,PTABのクレーム解釈について当事者に反論の機会を 与えなかったため,行政手続法に違背するとして,PTABが行ったクレーム解釈及びこれに続く非自明の判断を不服として,CAFCに控訴した。    

[CAFCの判断]

 CAFCは,H社の主張に対し,以下の通り判示した。
 第一に,H社はF社より,IPR開始前の応答及び口頭審理を通してF社が提示するクレーム解釈の内容を適切に知らされていた。従って,H社にはF社のクレーム解釈についての 見解を示す機会が与えられていた。
 第二に,PTABが行ったクレーム解釈はF社が提示したクレーム解釈と十分に近い(PTABのクレーム解釈が“a nozzle pre-positioned such that it points at the splash shield.” であったのに対し,F社が提示したクレーム解釈は“at least one nozzle oriented towards a soiled area of the splash shield,”であった)。
 これらを理由として,CAFCはH社の主張を退け,IPRにおいてPTABが独自に行ったクレーム解釈は適法であり,特許が維持されるべきであるとのPTABの決定を支持した。

(木島 正人)

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