専門委員会成果物

合理的な特許権使用料の算定に非侵害製品は考慮しないと判断した事例

CAFC判決 2018年11月19日
Enplas Display Device Corporation, et al. v. Seoul Semiconductor Company, Ltd.

[経緯]

 Enplas Display Device Corporation(E社)は,フラットスクリーンテレビのバックライトに用いられるプラスチックレンズを製造している。E社はSeoul Semiconductor Company, Ltd.(S社)と, 2010年11月から2011年6月までレンズの製造のための協力をした。S社は,E社とレンズ販売に関する排他的な関係にあった。
 しかし,2012年にS社は,E社がS社の競合他社にレンズを供給していることを確認し,特許6,007,209(’209特許)及び特許6,473,554(’554特許)の誘引侵害をしているとしてE社に警告状を送付した。
 これを受けて,E社は,上記2件の特許が無効である旨又は特許を侵害していない旨の確認判決を求めて地裁に提訴した。これに対し,S社は地裁でE社が誘引侵害している旨主張した。
 裁判において陪審は,特許の有効性とE社の誘引侵害を認め,S社の損害に関する専門家の証言に基づき,被疑製品ではないレンズを含むE社の全ての製品に対して,賠償額として’554特許に対しては 一括金400万ドル,’209 特許に対しては一括金7万ドルの支払を認めた。E社はこれを不服としてCAFCに控訴した。    

[CAFCの判断]

 CAFCは,特許の有効性と誘引侵害の判断を支持した。しかし,CAFCは,’209特許の賠償額を認める一方で,’554特許の賠償額に対し地裁の判断を退けた。
 S社の専門家は,E社とS社の仮想交渉において,被疑製品のライセンスを受けたとしても被疑製品と類似する製品を製造することにより新たに侵害のリスクが生じるとすれば,ライセンスの 対象は単に被疑製品に限るものではないとし,自由に事業を行うために必要なライセンスの対象としては,被疑製品だけでなく,将来潜在的に侵害する製品も考慮すべきであると証言した。
 これに対し,CAFCは,特許侵害を構成しない行為に対して損害賠償を支払うことは特許法第284条に基づいて損害を補償する行為として適切ではなく,侵害していない製品及び侵害していることが 示されていない製品も考慮して賠償額を算定することは合理的ではないと判断した。また,CAFCは,継続して将来支払われる特許使用料に代わって一括での支払でもよいが,特許使用料は過去の 非侵害製品の売上額ではなく,侵害する製品の売り上げ相当額に基づくべきであると判断した。

(大久保 亮成)

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