専門委員会成果物

別訴訟で必要不可欠又は根本的であるとされた争点について争点効が認められた事例

CAFC判決 2018年12月10日
VirnetX Inc. v. Apple Inc.

[経緯]

 VirnetX Inc.(V社)は,特許8,504,696(’696特許)を保有する。
 Apple Inc.(A社)は,2015年12月に,’696特許を対象として,計2件の当事者系レビュー(Inter partes review(IPR))を請求した。2件の請願書の無効とすべき理由(Ground)には, 共通の先行技術であるRFC2401が使用されていた。特許審判部(PTAB)は両方の請願書に対して手続開始の決定をし,V社は両方のIPR手続きにおいてRFC2401が刊行物ではないと反論していた。 最終決定においてPTABは,RFC2401は刊行物であり,’696特許は自明であるため特許性が無いと結論付けた。V社はこの判断を不服としてCAFCに控訴した。
 本件の控訴が係属中に,V社とA社の別訴訟の判決が下された。この別訴訟は,7件のIPRの最終決定に対するV社の控訴であり,これらのIPRの請願書でもGroundにRFC2401が先行文献 として使用され,V社は刊行物ではないと反論していた。しかし,PTABはV社に同意せず,RFC2401を刊行物と認定した。2018年3月16日にCAFCは,連邦裁判所規則第36条に従ってPTABの決定を支持していた。
 A社は,別訴訟でRFC2401が刊行物か否かの争点は既に争われているため,争点効の理論に従い,本件において同様の争点を再度争うことは出来ないと主張していた。
 これに対してV社は,本件に争点効は適用されず,たとえ適用されたとしても,V社が冒頭趣意書において,AIAが制定される前に出願された特許に対してIPRを遡及的に適用するのは憲法上の 異議があるとしていることから,争点効の認定は全ての争点を解決しないと主張していた。          

[CAFCの判断]

 CAFCは,刊行物の争点は別訴訟において必要不可欠又は根本的な争点であることから,争点効の理論に従い,V社は本件において刊行物の争点について議論する事はできないとし, PTABの決定を支持した。CAFCは,別訴訟におけるそれぞれのGroundにRFC2401が使用され,V社でさえ口頭審理中に刊行物の争点は別訴訟における基準の問題であると認めていると認定した。
 また,V社はIPRの遡及の争点について,冒頭趣意書の1段落でしか触れておらず,口頭審理で具体的に説明していないことを認めており,この争点を維持するためのV社の行動は, 誠実さに欠けるとし,CAFCはV社がこの争点を維持していないと結論付けた。

(陶山 研悟)

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