専門委員会成果物

欧州特許庁審判部,2017年次報告書を公表

 4月18日,欧州特許庁審判部は2017年次報告書(Annual Report 2017)を発表した。
 この中で,審判部の組織改革,審判事件処理件数等に関する統計値,審判部の人員構成を公表した。
2017年3月1日,審判部は,欧州特許機構の下で欧州特許庁と同じく管理理事会に対して責任を負う組織(審判部ユニットthe Boards of Appeal Unit)となり,審判部長官 (Carl Josefsson氏)を置いた。所在地もミュンヘン近郊のハール(Haar)へ移す等,欧州特許庁内での独立性や機能強化が図られている。
 この組織改革の実行により,向こう5年間の目標で,90%の審判事件を30ヶ月で終結させ審判請求事件処理の滞貨を7,000件以下にすることを掲げている(2017年末の滞貨は8,896件)。 また,審判官増員も計画している。

 本年次報告で公表された統計値は以下の通り。
 2017年に技術審判部に審判請求された事件は2,798件であり,査定系(拒絶査定不服審判相当)1,081件,当事者系(異議決定への不服審判相当)1,717件であった。審判請求件数は年々増加していて (2016年(2,748件),2015年(2,387件)),2017年もこの傾向が続いた。
 平均審理時間は38ヶ月(査定系42ヶ月,当事者系35ヶ月)であり,これは前年の37ヶ月(査定系40ヶ月,当事者系34ヶ月)に比して,長期化している。2年以上係属している事件は4,178件あり, 全体の係属件数の約47%を占めている。
 2017年に終結した審判請求事件は2,284件であり,これは前年(2,229件)より増加した。
 査定系での終結件数は1,005件で,このうち実質的な審理に基づく審決により終結した件数は469件であった。469件のうち請求を棄却した審決は281件(59.9%),請求を認容し,特許査定した 審決は96件(20.5%),審査部へ差戻した審決は92件(19.6%)であった。
 当事者系での終結件数は1,279件で,このうち実質的な審理に基づく審決より終結したものは779件であった。 779件のうち請求を棄却した審決は326件(41.8%),請求を認容した審決は453件 (58.2%)であった。453件のうち特許権を全部維持した決定は22件(2.8%),一部維持決定は170件(21.8%),取消決定172件(22.1%)等であった。
 2017年末に係属している審判事件件数は8,896件であり(査定系3,653件,当事者系5,243件),終結件数より請求件数が上回った結果,2016年末の8,381件より増加している。
 2017年に審判請求された事件2,798件の手続言語は,英語72.1%,ドイツ語23.7%,フランス語4.2%であった。
 2017年に口頭審理された件数は1,178件(2016年は1,168件)であり,手続き言語は英語が71.1%,ドイツ語が23.6%,フランス語が5.3%であった。

 審判部の2018年1月1日現在の人員構成は以下の通り。
 審判長は27名,技術審判官(Technically qualified members)は93名,法律審判官(Legally qualified members)は27名である。スタッフを含めた審判部の合計人員は202名であり, 2017年1月1日の合計人員(204名)と殆ど変わらない。

審判部年次報告書公表(2018年4月18日)
http://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/communications/2018/20180418.html

審判部年次報告書
http://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/annual-report.html

欧州特許庁組織改革
https://www.epo.org/about-us/annual-reports-statistics/annual-report/2016/highlights/boards-of-appeal-reform.html

欧州特許庁の組織図
http://www.epo.org/about-us/governance.html

(参照日:2018年5月18日)

(内田 壮哉)

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