専門委員会成果物

Unitary Patent(単一効特許)に向けて欧州が加速

 単一効特許は,EPOに対して単一の出願を行うことによって,26を超える欧州の加盟各国で特許による保護を受けうる制度である。これにより,出願人の手続の簡素化および費用削減の効果がある。 また,統一特許裁判所(Unified Patent Court)は,単一効特許および欧州特許の双方について,侵害の有無および有効性を判断するために設けられる国際裁判所である。これにより,訴訟コストが 低減され,法的安定性を高めることができる。
 7月3日にミュンヘンで開催されたEPO主催の会合には,200名を超える産業界・政府・学界および法律のプロフェッショナルが参加し,単一効特許および統一特許裁判所の最新の状況および その準備について議論した。会合の参加者からは,単一効特許に対する強い支持と,この新たなシステムの開始が強く望まれた。
 EPOの António Campinos長官は,基調講演において,「単一効特許および統一特許裁判所は大きな潜在的な可能性を持つものである」とした上で,「このプロジェクトは,IP市場へのアクセスを 提供する非常に重要で新しいツールになる。そして,効果的かつ高品質の特許にアクセスすることを促すことこそ,EPOの機能そのものである」と述べた。
 Campinos長官はまた,16の加盟国がすでに統一特許裁判所の合意に批准しており,20近い加盟国でこの新たなシステムを開始するものと当然に信じられる理由があるとして,単一効特許および 統一特許裁判所が早急に運用されることに強い自信を示した。
 単一効特許,欧州,および国際法務に関するEPOのprincipal directorである Margot Fröhlinger 氏は,基本方針演説において,現在システムの開始において生じている遅延および不確実性に対処する うえでの情熱,忍耐,および,根気の重要性を強く主張した。
 特別委員会の議長である Jérôme Debrulle 氏および統一特許裁判所準備委員会の議長である Alexander Ramsay 氏は,単一効特許パッケージの開始に向けた準備に関する現状について概説した。 その中で両氏は,システムの開始に向けた全ての準備は整っているが,現在は外的要因,特にドイツの連邦憲法裁判所における統一特許裁判所の批准に関する反対意見に関する決定次第だとしている。
 「Mock Trial」とのテーマで行われたパネルディスカッションでは,欧州における著名な裁判官のパネリストが様々な裁判権に関する仮差止の要求に対して異なるアプローチから議論し,このような 要求に対して統一特許裁判所がどのように扱うかについての洞察を加えた。
 会合を通じて,ユーザは,新たなシステムに対する強い支持とシステムの早期の実効の要求とを繰り返し示すとともに,Brexit後のイギリスの単一効特許・統一特許裁判所への参加の検討と 解決策が見出されることを求めている。

EPOニュース(2018年7月5日)
https://www.epo.org/news-issues/news/2018/20180705.html

単一効特許および統一特許裁判所について
https://www.epo.org/law-practice/unitary.html

Conference program
http://www.unitarypatentsystem.eu/

(参照日:2018年8月17日)

(川合 真一朗)

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