専門委員会成果物

WIPOがGIIランキング2018を公表

 世界知的所有権機関(WIPO),コーネル大学,欧州経営大学院(INSEAD)が2018年のグローバル・イノベーション・インデックス(GII)ランキングを公表した。 上位10位にランクインした国は,1位から順にスイス,オランダ,スウェーデン,イギリス,シンガポール,アメリカ合衆国,フィンランド,デンマーク,ドイツ, アイルランドとなった。
 GIIランキングは,2007年以降毎年発表されており,企業幹部,政策立案者など世界のイノベーションの状況に注目する人々のための主要なベンチマーク・ツールとなっている。
 GIIは,イノベーション・インプット・サブインデックスとイノベーション・アウトプット・サブインデックスの2つの指標の平均として計算される。イノベーション・ インプット・サブインデックスは,制度整備,人的資本と研究への投資,インフラ整備,市場の洗練度,産業の洗練度の5つのイノベーションを推進する要素に関する項目からなり,イノベーション・アウトプット・サブインデックスは,知識や技術のアウトプットと,創造的なアウトプットという2種類のアウトプットに関する項目からなる。それぞれの項目は,更に複数の指標を有している。
 主要国の状況を見ると,アメリカ合衆国は2017年から2ランク下がり,6位となったが,R&D投資を含め,主要なイノベーション・インプットおよびアウトプットに関する指標においてトップであり続けている。また研究者数,特許及び科学技術出版物の数は,中国に続き2位となっている。
 中国は,17位で初めてトップ20位入りした。WIPOのガリ事務局長は,「中国の知識集約型産業への移行という中国の戦略を反映したものである」という趣旨のコメントをしている。
 日本は,アジア圏ではシンガポール(5位),韓国(12位)に次ぎ,3番手となる13位となっている。日本のイノベーション・インプット・サブインデックスは昨年より1ランク下がり12位,イノベーション・アウトプット・サブインデックスは昨年より2ランク上がり18位となっている。日本が昨年と比べて特にランクを上げた項目は制度整備(8位)と創造的なアウトプット(31位)であり,何れも昨年より5ランク上昇している。さらに創造的なアウトプットが改善した主な原因として,オリジナル商標およびモバイルアプリの創造に関する指標が挙げられた。一方,日本が昨年と比べランクを下げた項目としては,人的資本と研究への投資(16位)が挙げられる。中でも教育(49位)とR&D(5位)に関する支出額の指標において,以前のような地位ではない。一方で,企業により調達される国内R&D総支出,2以上の特許庁に関わるパテント・ファミリー,知的財産収益といった指標において日本は1位にランクしている。
 GII 2018は,さらに「イノベーションで世界を活気づける」ことをテーマとして取り上げている。世界中で増加するエネルギー需要に対して,気候変動への影響を 考慮したグリーンテクノロジーのイノベーションを拡大させる必要性が高まっていることが指摘されており,PwC戦略コンサルティング事業部のプリンシパルのBarry Jaruzdski氏は,「エネルギー産業に関わる企業幹部は,事業基盤の変動に気づいており,この変化の後で企業が生き残れるか否かは,新しいエネルギーの使用とその分配技術に関するイノベーションをいかにして創出していくかで決まってくる。電力産業は,イノベーションの鉱脈を手にするチャンスがある。」と述べている。

WIPOプレスリリース(2018年7月10日)
http://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2018/article_0005.html

GIIランキング2018
http://www.wipo.int/edocs/pubdocs/en/wipo_pub_gii_2018.pdf

(参照日:2018年8月10日)

(大庭 弘貴)

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