専門委員会成果物

EPO特許情報会議2018が開催

 2018年11月12日にブリュッセルで開催された第28回欧州特許庁(EPO)の特許情報会議には,40カ国の400人以上の特許専門家が集まり,特許情報の検索と利用に関する最新の ツールや動向について話し合った。
 この会議は,EPO長官のAntó?nio Campinos氏,ベルギーの副首相代理兼雇用・経済消費者大臣であるKris Peeters氏,ベルギーの経済規制総裁であるSéverine Waterbley氏の 基調講演により開会された。その講演において,Peeters副首相は「イノベーションを刺激するには,イノベーションを保護することが重要である。すなわち知的財産権を保護 することが重要である。」と述べた。
 EPO長官のCampinos氏は,「我々は優れた知的財産情報はビジネスと経済を推進できることを知っている。そのため,我々は情報を発信するという義務を単に遂行するのではなく, 最高の結果をもたらすことに責任を持っている。」と発言し,最高品質の特許情報を提供することによって,経済とユーザーを支援するEPOの責任を強調した。
 EPOによる特許情報会議はヨーロッパ最大の特許情報イベントである。企業および個人事業者に所属する特許検索者,各特許庁の専門家,民間の特許情報サービスの提供者らが 参加者であり,一連のプレゼンテーション,パネルディスカッションおよびトレーニングセッションに参加した。
 トレーニングセッションでは,検索ストラテジーや,特許ファミリーの理解,20年後における特許権満了後の保護を含めた多くのテーマに関する実践的なアドバイスを受けた。 また,プレゼンテーションとディスカッションにより,参加者は主要トレンドの追跡,将来に影響を与える可能性のある問題を議論することができた。さらに,人工知能, ブロックチェーン,ソフトウェア関連発明,特許分析,LOD(Linked open data)などのトピックが議論された。
 特許は発明を公開することと引き換えに付与される。出願後18ヶ月後に必須となる特許出願の公開は,最新の技術開発情報へのアクセスを提供することになる。EPOは特許情報を 含む最先端の主要データベース(Espacenet)を管理している。EPOは,新しいツールとサービスを継続的に追加しており,一部はEPO加盟国やEPO外の庁とも協力して取り組んでいる。 特許情報は発明者や社会にとって貴重な資源であるため,EPOは特許情報をより民間が自由に使える新しい方法を模索している。特許情報は,発明の保護や法的な落とし穴を回避する 以外に,研究開発費の削減,ライセンシングパートナーの特定,業界トレンドの観察,競合他社の監視のためのツールとして使用できる。今日,誰でもEPOのEspacenetデータベースを 自由に使用して世界中の1億以上の特許文書に自由に簡単に瞬時にアクセスすることができる。

特許情報記念の祝福
 2018年は,INPADOC legal status誕生40年,欧州特許情報政策創設30年,Espacenet運用開始20年,欧州特許登録庁を連合させる構想10年というEPOにとって記念の年である。 Campinos長官は,これらのマイルストーンに感謝し,EPOの責任を以下の通り誓約した。
 「我々は,特許情報分野における将来のニーズを満足するという40年前に開始した責任を引き続き遂行することを約束します。」

(参考)
https://www.epo.org/learning-events/events/conferences/2018/pi-conference.html

(参照日:2018年12月14日)

(齊木 惇高)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.