専門委員会成果物

審査タイミングの柔軟性向上(審査延期システムの導入)に関するユーザー協議

 欧州特許庁(EPO)は,欧州特許出願の審査を延期する手段を提供することにより,審査タイミングをより柔軟にする可能性について,利害関係者にオンライン協議を要請した (オンライン協議の受付は2019年1月11日に締め切られている。)。
 2014年のEarly Certaintyイニシアチブの着手以来,EPOは特許付与手続の時間を大幅に短縮してきた。早い段階で特許保護範囲に関する情報が取得できるため,出願人を含めた社会全般は, 出願処理の迅速化を歓迎してきた。
 一方で,出願人は特許付与前により多くの時間を必要とする場合もあるとも言及されてきた。このような事情に鑑みて,2017年秋,EPOは,出願人が実体審査の開始を最大3年間延期できる User-Driven Early Certainty1)案を提示した。
 EPOは,あらゆる技術分野におけるイノベーションをサポートし,欧州特許システムにおけるすべての利害関係者の利益を考慮することに注力している。プロセスおよびサービスの質と 有効性を高めるためにユーザーと協力することはEPOの慣習であり,ユーザーのフィードバックはEPOの活動において重要な役割を果たすものである。
 この協議の主な目的は,欧州特許付与手続における審査延期スキームの導入,これがユーザーおよび一般社会にもたらす可能性のある利点と欠点,およびその潜在的な経済および事業への 影響に関して,すべての利害関係者の見解を得ることである。
 EPOはさらに,そのような手続機構を実行するために考え得る様々なオプションや機能に関し,情報を収集することに関心を寄せている。
 これらのオプションや機能は,考え得るものが既に余すところなく導入されていると理解されるべきでなく,参加者はさらなる対策を提案するように明示的に求められる。
 回答プロセスを促進するため,このオンライン協議では,質問に対し選択肢が用意されており,選んだ選択肢とともにコメントを記載する形式となっていた。まず,審査延期システムに 関する方策や意見に対する支持の程度に関する質問からいくつかの詳細な質問に答え,次いで枠内に回答の理由をコメントする形式となっていた。

1)User-Driven Early Certainty
 (補足)欧州調査報告から6ヵ月以内,または欧州段階への移行から6ヵ月以内であれば,出願人は実体審査の開始延期を申請できる。なお,第3者からの要求に延期の申請は解除される。2018年7月1日以降に調査報告が発行される欧州直接出願および2018年7月1日以降に欧州段階に移行する欧州PCT出願に適用される。

EPOユーザー協議
https://www.epo.org/law-practice/consultation/completed.html

https://www.epo.org/news-issues/news/2018/20181119.html

(参照日:2019年2月1日)

(三輪 恵)

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