専門委員会成果物

欧州特許庁がブロックチェーンの特許化に関する最大規模のカンファレンスを開催

 欧州特許庁(EPO)はブロックチェーン(blockchain)の特許化に関する最大規模のカンファレンスを2018年12月4日,ハーグにて開催し,300人を超える参加者が出席した。 ブロックチェーン技術が適用される技術分野の多様性はこれまでになく拡がり続けていることから,ブロックチェーンのもたらす特許出願人およびその他の利害関係者への影響や 可能性について1日にわたり議論された。
 EPO長官のAntónio Campinos氏は歓迎の挨拶の中で,「第4次産業革命の技術はますます勢いを増しており,知的財産に関わる全ての者は,この大きな変化の時代を牽引する 技術の発展に取り組み,その影響を理解する必要がある。」と強調した。また,ブロックチェーンに関する特許出願が急増していることを指摘し,そのような特許はそれでもなお, これまでにコンピュータ関連発明に関する判例法に基づいて作り上げられた確固とした基準に沿ってEPOにおいて審査されていることを述べた上で,「EPOの審査ガイドラインは, これらの基準が透明性を有していること,およびEPOのプラクティスが審査官及び利害関係者の両方にとって予見可能であり続けることを保証するために,絶えず見直されている。」と明確に述べた。
 最初の基調講演では,ブロックチェーンの基礎をはじめ,この新技術の主な原則,キープレーヤーおよび適用分野について触れ,パネルディスカッションでは,現在急速に 発展しているこの分野の将来への影響や,人工知能(AI)のような他の発展しているデジタル技術との関連性について議論された。また,このカンファレンスでは,ブロック チェーン検索(searching blockchain)やブロックチェーンに関連する法的問題,そして特にEPOがどのようにブロックチェーン特許出願を審査するのかという,増え続ける様々な課題についても取り上げられた。
 最新の特許情勢分析によれば,2015年以降,当該分野の特許出願の急増が明らかになっている。これは,AIや自動運転車などの関連技術分野と同様の傾向である。そのため, ブロックチェーンに関する出願が急上昇している中国と日本での取り組みに関する発表は,特に両国でのブロックチェーンの取扱いにおける類似点と相違点について特段の関心が寄せられた。
 カンファレンスの終わりに,EPOオペレーション担当副長官のAlberto Casado氏は,「我々は革命の始まりにいる。ブロックチェーンは金融分野で始まったが,あらゆる分野の産業用途に広がっており, あらゆる分野で成長している。」と述べ,ほぼ無限の用途において期待される,イノベーションに対するブロックチェーンの将来性を強調した。

EPOニュースリリース

https://www.epo.org/news-issues/news/2018/20181205.html

(参照日:2018年12月26日)

(篠田 拓也)

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