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〈中国〉専利審査指南の改正

 2019年9月23日,国家知識産権局は,専利(特許,実用新案,意匠)審査の質及び審査効率を高めることを目的として,専利審査指南の改正を行うことを決定した(2019年11月1日施行)。今回改正された専利審査指南の主な項目は,以下のとおりである。

●単一性違反に伴う分割出願(再分割出願)の時期,出願人・発明者に関する改正(第一部分第一章5.1.1)
●GUIに関する製品意匠についての関連規定の改正(第一部分第三章4.2,4.3)
●発明専利出願の進歩性審査及び公知常識の判断に関する規定の改正(第二部分第四章3.2.1.1,6.4)
●検索に関する規定の改正(第二部分第七章2〜)
●無効審判に関する規定の改正(第四部分第三章3.3)
●直接面談および電話面談に関する規定の改正(第二部分第八章4.11,4.12,4.13)改定
●幹細胞,ヒト胚性幹細胞に関する規定の改正(第二部分第一章3.1.2,第二部分第十章9.1.1.1)
●専利出願の審査順番,優先審査および遅延審査についての改正(第五部分第七章8.1,8.2,8.3)
●費用納付情報の補足に関する内容の改正
●権利の移転に関する改正(第一部分第一章5.1.1)

 本稿では,今回の改正を受けて,会員企業が中国で特許を権利化する上での実務上の変化が予想されるであろう,直接面談および電話面談に関する規定の改正について詳細に紹介する。

〈直接面談および電話面談に関する規定の改正の概要〉
【1】面接の方式として,電話討論などの制限が緩和された(第二部分第八章4.11.1)。具体的には,電話討論について,「別の問題については,可能であれば,審査官は本章第4.13節に述べた方式を利用して,電話を通じて出願人と討論してもよいとする。」という条件が削除され,「必要な場合には,出願人との面接,電話での討論及びその他の方式により審査を加速させることもできる。」と緩和された。
【2】討論の内容の緩和,及び,審査官が面接を拒否できる要件が明確化された(第二部分第八章4.12)。具体的には,面接の実施条件に,「実体審査過程」であることが追加された。また,面接要請の同意条件に,従来の「面接を経て有益となる目的を果たす」ことに加えて「問題の明確化,食い違いの排除,理解の促進に 資するならば」が追加された。さらに面接要請の拒否条件が「書面方式,電話での討論などを通じて双方の意見が既に十分に表明されており,関連事実の認定が 明瞭であるならば」であることが明確になった。
【3】面接の実施条件であった「(1)審査官がすでに1回目の審査意見通知書を発行している,かつ(2)出願人が審査意見通知書の応答と同時に,又はその後に,面接の要請を申し立てている,若しくは審査官が案件の事情に応じて出願人に面接を要請している。」が削除され,実施条件が緩和された(第二部分第八章4.12.1)。
【4】電話以外の方式(ビデオ会議や電子メール)での討論が緩和された(第二部分第八章4.13)。具体的には,電話以外の方式の実施条件に,「実体審査過程」であることが追加された。また従来の出願書類にある問題点に加えて,発明と従来技術への理解についても討論が可能になった。ビデオ会議,電子メール等その他の方式での討論が可能に なった。従来は必須であった審査官による討論の内容の記録とファイルへの保管が「必要がある場合」となり,審査官の裁量となった。審査官が同意した補正内容については,「審査官が職権により補正することができる内容を除いて,」出願人が当該補正をする書類を正式に提出する必要があることが追加された。

〈直接面談および電話面談に関する規定の改正を受けての今後の対応〉
 上述したように,改正前は,面接の実施条件として,「審査官がすでに1回目の審査意見通知書を 発行している」という時期的制限があったが,改正後は,面接の実施条件からこの時期的制限が削除された。これにより,実体審査の期間中であれば,例えば,実体審査開始が通知された後であって,1回目の審査意見通知書が発行される前であっても,技術説明等の発明に対する審査官の「理解の促進に資する」ものであれば,出願人は審査官面接を要請することが可能になったことは注目に値する。
 また,改正後は,審査官が面接,討論の内容を記録するのが「必要がある場合」となり,審査官の裁量となったことにも着目したい。審査官が面接,討論を 躊躇する理由として,議事録(記録)作成の業務負荷が大きいことも要因の一つと考えられていた為,今後の面接,討論の普及がどのようになるか,今後の動向が 注目される。また,審査官面接を行った結果,どのような場合に審査官が討論の内容を記録し,一方,どのような場合に審査官が討論の内容を記録しないかの線引き が如何なるものか,改正後の審査官面接の実際の運用状況を見極めることが必要であろう。
 いずれにせよ,直接面談および電話面談に関する規定の改正を受けて,会員企業は,現地代理人の意見を適宜参考にし,書面方式,電話での討論,及び面接を 必要に応じて使い分けながら,中国における特許の権利化を促進させることが有効といえよう。

〈参考〉

(参照日:2019年10月29日)

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