専門委員会成果物

関税法337条(g)(1)に基づく救済を認め,ITCの決定を棄却した事例

CAFC判決 2018年12月7日
Laerdal Medical Corporation, et al. v. International Trade Commission

[経緯]

 2016年3月,Laerdal Medical Corporation(L社)は,米国国際貿易委員会(ITC)に,被申立人(計11)がL社の特許権,商標権,トレードドレス及び著作権を侵害しているとして, 関税法337条違反に係る訴状を提出し,排除命令等に係る救済を求めた。
 2016年6月,L社は,ITCの不公正輸入調査室からの求めに応じ情報を提供するとともに,仮に証拠が不十分であるならばITCにて調査を開始するよう要求した。続いて,ITCはL社主張の一部に係る 特許権等についてのみ調査を行った。
 一方,全ての被申立人は本訴状への応答等を一切行わなかったため,行政判事(ALJ)は,全ての被申立人が欠席した(default)との仮決定を下した。該決定に基づき, L社及び不公正輸入調査室は,関税法337条(g)(1)に基づき,ITCはL社が訴状で主張したすべての事実を真実と推定し,排除命令等を下すよう要求した。
 しかしながら,2017年6月,ITCはL社によるトレードドレス及び著作権に基づく救済の主張が不十分であったとして,該救済を認めない最終決定を下した。
 L社は,トレードドレスに基づく救済が認められない最終決定を不服とし,CAFCに控訴した。      

[CAFCの判断]

 CAFCは下記の通り,関税法337条(g)(1)の法解釈を示すとともに,ITCの決定を棄却し,適切な救済措置を講じるよう差し戻した。
 CAFCは,関税法337条(g)(1)は「関税法337条(g)(1)(A)から(E)に係る要件が満された場合,ITCは公益上の懸念を鑑みた上で,訴状で主張された事実が真実であると推定し,被申立人に 対して排除命令等を下さなければならない(Commission shall…)」と明確に規定していると判断した。更に,CAFCは,当該法解釈は,法文,判例(「shall」が「must」を意味すること), 周辺の条文(関税法337条(g)(2)にて「may」が使用されていること),立法目的,立法経緯,及びITC自身による過去の法適用が根拠となると判断した。
 L社が関税法337条(g)(1)(A)から(E)の要件を満たすことについては争いがなく,不公正輸入調査室等が公益上の懸念がないことを主張していることから,CAFCは,ITCによる「L社が, 被申立人による違反を十分に訴えることができなかったため,トレードドレスに基づく救済は認められない」との最終決定を破棄し,公益上の懸念を考慮した上で,適切な救済措置を講じるよう,ITCに差し戻した。

(臼井 伸也)

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