専門委員会成果物

ゲームルールをクレームした出願について,特許法101条の特許適格性がないと判断した事例

CAFC判決 2018年12月28日
IN RE:Marco Guldenaar Holding B.V.

[経緯]

 Marco Guldenaar Holding B.V.(M社)は,カジノのサイコロゲームの遊び方に関する特許出願13/078,196(’196特許出願)を行った。’196特許出願は,3つのサイコロの所定の面に 印が付けられていて,サイコロを振って出た面の組合せにより支払金額が支払われるゲームの遊び方がクレームされている。審査官は,’196特許出願は「人間の活動を体系化する方法」の 範囲に入る「ゲームのルール」という抽象的概念に該当するとして,特許法101条の特許適格性がないとする拒絶査定を下した。M社はこの拒絶査定を不服として審判を請求したが, 特許審判部(PTAB)は拒絶を支持し,請求を却下する審決を下した。M社はこの審決を不服として,CAFCに控訴した。        

[CAFCの判断]

 CAFCは,Alice/Mayoの2ステップテストに基づき,’196特許出願の特許適格性を判断した。
 まず第1ステップに於いて,CAFCは過去のSmith判決(In re Smith, 815 F.3d 816 (Fed. Cir. 2016))で「トランプカードを使用した賭博ゲームは抽象的概念である」と判断されたことを 引用して,サイコロゲームに関する’196特許出願のクレームを抽象的概念であるとしたPTABの審決に同意した。
 次に第2ステップに於いて,’196特許出願のクレームにおける,賭けをする,サイコロを振る,支払金額を支払うというステップは従来のものであり,発明概念(Inventive concept)として 十分ではないとした。また,サイコロの面に付けられた印は印刷物を構成するものであり,特許法上の保護対象でもなく,ダイ上に印刷された印とダイの基材と機能的に関連するものでもないとした。
 以上により,CAFCは,’196特許出願のクレームは,抽象的概念を特許適格性のある発明に変換するのに十分な発明概念を含んでないと判断し,PTABの審決を支持した。

(杉山 大輔)

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