専門委員会成果物

特許となる準備ができたとは,発明が意図通りに機能したことが確認できたことであると判断した事例

CAFC判決 2019年1月24日
Barry v. Medtronic, Inc.

[経緯]

 Barry(B氏)は,異常な脊柱のずれを改善するために脊椎骨を調節するためのシステム及び方法に係る特許(出願日は2004年12月30日)を保有している。B氏は,Medtronic, Inc.(M社) の行為が本特許権を侵害するとして,地裁に特許権侵害訴訟を提起した。
 地裁における訴訟では,M社は,本特許に新規性がないとする無効の抗弁を主張したが,地裁は,この抗弁を退け,M社による特許権侵害を認めた。
 これに対して,M社は,地裁の判断を不服として,CAFCに対して控訴した。       

[CAFCの判断]

 M社は,主として,本特許は旧特許法102条(b)に基づき無効であるとの主張を行った。
 ここで,102条(b)では,米国出願日から1年より前に,米国内で公用された発明には特許しない旨が規定されている。そして,過去の最高裁判決等によって,公用されたと認定するためには, 当該発明がready for patenting(特許となる準備)となっていることが必要である。そのため,本件では,2003年12月30日より前に,本特許に係る発明が特許となる準備ができている否かが,争点となった。
 本件では,B氏は,本特許に係る方法を用いて,2003年8月,10月に計3回の手術を行った。その後,B氏は,2003年8月から2004年1月の間に,この手術を受けた患者に対して術後の経過観察を行い, その結果に基づき,本件特許に係る方法を用いた手術が成功したと判断した。
 上記事実を踏まえ,地裁は,2004年1月になって初めて,B氏の発明は意図した目的のために機能し,本特許に係る発明が特許となる準備ができたと認定した。
 したがって,CAFCも,地方裁判所の当該認定を支持し,102条(b)に基づく無効の抗弁を退けた。

(小林 祐樹)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.