専門委員会成果物

具体的な実施例を作成した者は発明者であると判断した事例

CAFC判決 2019年1月31日
Duncan Parking Technologies, Inc. v. IPS Group, Inc.

[経緯]

 IPS Group, Inc.(I社)はパーキングメータに関する特許8,595,054(’054特許)および特許7,854,310(’310特許)を保有している。Duncan Parking Technologies, Inc.(D社)の製品が 両特許権を侵害するとして,I社は特許権侵害訴訟を地裁へ提起した。
 ’054特許と’310特許の内容は似通っている。’054特許は2006年12月4日に出願され,発明者はKing(K氏)およびSchwarz(S氏)の2名だった。一方,’310特許は2008年2月27日に出願され, 発明者はK氏と他3名であり,S氏は含まれていなかった。
 D社は ’310特許に対してIPRを請願し,’310特許のクレームは’054特許に開示済みのため特許法102条(e)に基づき無効と主張した。一方,I社は’310特許のクレーム,および’054特許の内容は K氏単独の発明であり,発明者同一を根拠に特許法102条(e)は適用されないと主張した。
 PTABはI社の主張を支持し,’310特許は有効であると判断した。しかし,D社はPTAB決定を不服としてCAFCに控訴した。        

[CAFCの判断]

 CAFCはPTAB判断を否定し,’310特許は無効であると結論づけた。なぜならば,’054特許はK氏とS氏とによる共同発明であるため,特許法102条(e)の適用ができないからである。この結論において, CAFCはS氏が共同発明者に当たるかどうかに関し以下のように判断した。
 まず,’054特許のどの部分について’310特許が先行技術として依拠しているかを特定し,当該依拠した部分について,S氏がどの程度考案したかを評価した。そして,当該依拠した部分の S氏による貢献度合いを鑑み,S氏が’054特許の共同発明者に当たるかを判断した。
 本件では,’310特許における必須の電子システム構成は’054特許に記載されているブロック図に全て依拠していた。その図は,K氏からの大まかな指示を超えて具体的にS氏が作成したものであった。 つまり,’054特許に対するS氏の貢献は,極めて重大なものであるため,S氏は共同発明者に当たるとした。

(松谷 慎太郎)

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