専門委員会成果物

IPRへの参加人のみによるCAFCへの控訴を認めた事例

CAFC判決 2019年2月1日
Mylan Pharmaceuticals Inc., et al. v. Research Corporation Technologies, Inc.

[経緯]

 Research Corporation Technologies, Inc.(R社)はてんかんの治療薬に関する特許を保有している。Argentum Pharmaceuticals LLC(A1社)は,R社から本特許権を侵害するとして提訴されたため, PTABにIPRを請願した。同時期にR社から侵害訴訟を提起されたMylan Pharmaceuticals Inc.(M社),Breckenridge Pharmaceutical, Inc.(B社),Alembic Pharmaceuticals Ltd.(A2社)の各社も IPRを請願したところ,PTABはこれらの請願をA1社の請願に併合した。
 A1社は複数の先行技術文献を挙げ,特許が自明であると主張した。しかし,PTABは,A1社の主張を認めず,特許は有効であると判断した。
 A1社はCAFCに控訴しなかったが,参加人であるM社,B社及びA2社が,本件に関するPTABの判断は誤りであるとしてCAFCに控訴した。
 これに対してR社は,M社,B社及びA2社はIPRにおいてPTABにより参加を認められたに過ぎず,特許法319条の利益の範囲に入らないため,CAFCに控訴する当事者適格に欠けると主張した。          

[CAFCの判断]

 CAFCはR社に対し,PTABがIPRにおいて参加人の参加を認めた限りは,これらの参加人はCAFCに控訴する当事者適格を満たすとして,その主張を退けた。R社の主張を認めた場合,IPRへの参加を規定した 特許法315条の“Party”と,控訴について規定した特許法319条の“Party”は別の内容を指すということになる。しかし,そのように条文を解釈する根拠をR社が提示しているとは言えないというのが その理由であった。

(木島 正人)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.