専門委員会成果物

抗体検出による診断方法が特許適格性なしと判断した事例

CAFC判決 2019年2月6日
Athena Diagnostics, Inc., et al. v. Mayo Collaborative Services, LLC, et al.

[経緯]

 Athena Diagnostics, Inc.(A社)は,重症筋無力症と患者体内の抗MuSK抗体の存在との関係を発見し,当該抗体の検出による診断方法に関する特許を取得していた。A社は,Mayo Collaborative Services, LLC(M社)が開発した診断試験に対し,特許権侵害を理由に提訴した。M社は,本特許の対象クレームが特許法101条の特許適格性を有さないことを理由とする 訴え却下の申し立てを行い,地裁は,この申し立てを認めた。これに対し,A社は判決を不服としてCAFCに控訴した。           

[CAFCの判断]

 CAFCは,地裁の判決を支持し,本特許の対象クレームは特許適格性を有しないと判断した。
 CAFCは,特許適格性の判断において,Mayo/Alice両最高裁判決において示された2ステップテストに基づいて,以下のように検討した。まず,第1のステップにおいて,本特許の対象クレームは, 疾患と患者体内の抗MuSK抗体との関係という特許適格性のない自然法則そのものを対象としたものであると判断した。続く第2のステップでは,本特許には,抗MuSK抗体の検出自体はELISA法や 放射免疫測定法など公知の標準的手法により行われ得る旨が記載されているに過ぎず,自然法則そのものを特許可能な主題へと変換するための発明概念が存在しないことから,対象クレームは 特許適格性がないと判断した。
 なお,A社は,これまで疾患と抗MuSK抗体との関連性が発見されていなかったため,上述の検出手法は当該抗体の検出による診断目的には用いられておらず,従って公知ではない旨を主張した。 これに対しCAFCは,新規に発見された自然法則を観察する目的で標準的な手法を標準的に実施することは,発明概念に該当しないと判断した。

(金杉 勇一)

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