専門委員会成果物

明細書及び宣誓書に記載された態様にクレームを限定解釈するべきではないと判断した事例

CAFC判決 2019年2月8日
Continental Circuits LLC v. Intel Corporation, et al.

[経緯]

 Continental Circuits LLC(C社)は,自己が保有する計4件の特許に基づき,被疑侵害者らに対して侵害訴訟を提起した。対象となった特許はいずれも,複数層からなる電子デバイスに関するものであり, 層同士の接着を良好にするために,下層の表面(上層との接触面)が歯の様な不均一な凹凸形状を有することを特徴とする。
 ここで,4件の特許のいずれも,クレームでは当該特徴形状の形成方法を具体的には記載していない。一方で,明細書には最良の実施の形態として,当該特徴形状が複数回のエッチング処理によって 形成されることが記載されていた。また,審査過程においても,記述要件及び明確性の拒絶理由に対する応答として,「明細書に記載の「エッチング処理」の工程においては,上記特徴形状を形成する ための1つの方法として,複数回のエッチング処理が行われる」旨の専門家の宣誓書が提出されていた。
 地裁は,上記の明細書の記載及び審査過程における宣誓書の記載に基づいて,「複数回のエッチング処理」を含むようにクレームを限定解釈し,非侵害と判断した。
 この地裁のクレーム解釈を不服として,C社がCAFCに控訴した。             

[CAFCの判断]

 CAFCは,Epistar Corp. v. ITC, 566 F.3d 1321(Fed. Cir. 2009)を引用し,クレームの範囲を限定するためには,明細書が,クレームの範囲を明確に限定するような明示的な排除又は制限の表現を含む 必要があるとした。また,Verizon Servs. Corp. v. Vonage Holdings Corp., 503 F.3d 1306 (Fed. Cir. 2007)を引用し,審査過程での提出書類についても明細書と同様に,クレームの限定解釈のためには, クレームの範囲を明確に限定する明示的な記載が必要であるとした。その上で,CAFCは,明細書及び審査過程において提出された宣誓書では,いずれも,「複数回のエッチング処理」は,特徴形状を形成する ための1つの方法を例示するものとして記載されており,クレームの範囲を明確に限定する記載ではないと判断した。そして,地裁のクレーム解釈は誤りであるとして,非侵害との判断を破棄し,地裁に審理を 差し戻した。

(杉野 真也)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.