専門委員会成果物

クレーム中の個々の構成要素の製造を行っていなくとも,侵害となる組合せを製造する最終的な組立者には,侵害の責任が生じるとした事例

CAFC判決 2019年2月14日
CenTrak, Inc. v. Sonitor Technologies, Inc.

[経緯]

 CenTrak, Inc.(C社)は,超音波通信基地局を用いた携帯機器の位置特定システムに関する特許8,604,909(’909特許)の侵害を理由に,Sonitor Technologies, Inc.(S社)を地裁に提訴した。
 S社は’909特許のクレームの一部の構成要素である検知システムのみを顧客に販売しており,他の構成要素である基幹ネットワークやサーバ機器等の提供は行っていなかった。そのため,C社は, S社が販売する検知システムが対応ソフトウェアと共に顧客環境に導入され,データ登録等の必要な初期設定がなされたときに,S社が被疑侵害品を製造したことになるとして,S社による直接侵害の成立を主張した。
 一方S社は,’909特許のクレームの他の構成要素である基幹ネットワークやサーバ機器等について自身は製造,使用,販売等を行っておらず侵害行為が存在しないことを主張して略式判決の申立を行った。
 地裁は,単にサーバ機器等にデータ登録を行うというだけでは,クレームされた物理的なシステムの製造行為があったとは認定できないとして,当該申立を認容した。C社は,地裁の決定を不服とし,CAFCに控訴した。              

[CAFCの判断]

 CAFCは,たとえクレーム中の個々の構成要素の製造を行っていなくとも,侵害となる組合せを製造する(クレーム発明を完成させる)最終的な組立者には,侵害の責任が生じることを確認した。 また,一部の証拠は,S社の従業員が顧客環境において被疑侵害品を最終的に機能させるために必要なデータ登録等の初期設定を行ったことを示していると指摘した。
 CAFCは,上記理由により,重要な事実について実質的な争いが存在するとして,地裁の決定を破棄し,差戻した。

(三宅 祐輔)

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