専門委員会成果物

発明者適格の訂正請求は妥当であるとして地裁による訴状の却下を破棄した事例

CAFC判決 2019年2月22日
CODA Development s.r.o., et al. v. Goodyear Tire & Rubber Company, et al.

[経緯]

 CODA Development s.r.o.(C社)は,Goodyear Tire & Rubber Company(G社)の自己膨張タイヤ技術に関する複数の特許における発明者適格の訂正を求めて訴状を提出した。 訴状においてC社は,G社との間で行われた秘密会議でG社がC社の上記技術を許可なく撮影するなどしたうえで,C社発明者の名前を含まない特許出願を行って特許8,042,586 (’586特許)を取得したと主張した。G社は,’586特許の出願日より前に公表されたC社発明者による論文に上記技術が開示されていると反論した。C社は,上記論文に上記技術の全てが開示されていない旨の再回答書の提出許可を要求した。
 地裁は,救済が与えられうるような請求の原因をC社が主張していないとして訴状を却下し,C社による訴状の修正を否認した。そのため,C社は控訴した。       

[CAFCの判断]

 CAFCは,全ての事実を勘案するとC社の訂正請求は妥当であると判断した。
 特許法256条は,証拠があれば発明者の訂正が可能であることを規定している。C社の訴状には,G社とC社のやり取りの経過が詳細に示されている。 G社の開発失敗,C社との面会の要求,C社のプロトタイプの無許可撮影,C社と距離を置いた時期,そして’586特許の出願等,述べられている事実を容認し,推認される事項を勘案すれば,原告の発明者適格の訂正請求は合理的に推察できると,CAFCは結論づけた。
 そのうえでCAFCは,地裁の誤った結論が訴状にない事象を考慮したことによる手続き上の誤りに基づくものであるとした。
 訴状にない事象を考慮する場合は,却下の申し立ては略式判決の申し立てとして扱わなければならず,その場合,当事者に申し立てに係わる書類をすべて提出できる機会を与えられなければならない。地裁は,被告の申し立てから略式判決へ転換せず,さらに原告に関係書類の提出の機会を与えることをせずに,C社発明者による論文を考慮した。地裁は,2009年にG社が開示した時には秘密であったとC社が主張する事象を,2008年に開示されているかどうか判断する ために論文を使用したが,このことは事実問題として議論されるべき事象であるので,地裁の手続きは誤りであると判断した。

(大沢 真一)

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