専門委員会成果物

アメリカ合衆国憲法修正11条に基づく主権免除は侵害訴訟の提起・抗弁により放棄されるとしたうえで,対象特許は特許法101条の特許適格性がないと判断された事例

CAFC判決 2019年2月26日
University of Florida Research Foundation, Inc. v. General Electric Company, et al.

[経緯]

 University of Florida Research Foundation, Inc.(F財団)は,臨床装置からの生理的データを統合する方法に係る特許7,062,251(’251特許)の侵害を理由に,General Electric Company他2社(G社)を地裁に提訴した。G社は,特許法101条に基づき’251特許は無効であると主張した。地裁は,Alice最高裁判決(Alice Corp. Pty. Ltd. v. CLS Bank Intl., 134 S. Ct. 2347(2014))で示された2段階テストに基づいて,’251特許は特許法101条の特許適格性がないと判断した。
 F財団は,当該判断を不服としてCAFCに控訴した。その際にF財団は,州の機関であることからアメリカ合衆国憲法修正第11条に基づく主権免除の権利を有しており,G社の特許法101条適格性の抗弁に関しその権利を放棄してはおらず,したがって地裁が本件の事物管轄権を有さないことを主張した。        

[CAFCの判断]

 CAFCは,まず主権免除に関し,次のように判断した。
 F財団が有する主権免除の権利は,F財団がG社を地裁に提訴したときに放棄されている。さらにその範囲は訴訟提起だけでなく,侵害の申し立てへの抗弁に対しても及ぶ。 特許法101条は,特許法102条および103条と並ぶ特許性の条件であるから特許法282条(b)の特許有効性への抗弁に含まれる。つまり,G社による特許法101条の特許適格性に関する抗弁に対しても,F財団は主権免除の権利を放棄している。そして,特許性に関する異議を判断する事物管轄権を地裁は有する。
 次いでCAFCは,特許法101条の特許適格性がないとする,地裁の判断を支持した。
 ’251特許は,臨床装置から患者の生理的データを受け取り,コンピュータ中で変換しプログラムを作動させ,臨床モニターに表示する方法に関する。CAFCは,患者のデータをまとめるにあたり,従来のペンと紙を使用した手作業をコンピュータに置き換えることは抽象的アイデアに向けられたものであり,’251特許には具体的な構成要素に関するいかなる技術的な詳細説明もなされていないと述べ,2段階テストのステップ1における「データを収集し,分析し,操作し,表示する」 抽象的アイデアに過ぎないと判断した。また,2段階テストのステップ2についても同様であり,CAFCは,汎用のコンピュータを使用して特許クレームを実行する ことを提案しているに過ぎないと判断した。

(増原 宏樹)

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