専門委員会成果物

栄養補助食品に関するクレームの特許適格性が認められた事例

CAFC判決 2019年3月15日
Natural Alternatives International, Inc. v. Creative Compounds, LLC

[経緯]

 Natural Alternatives International, Inc. (N社)は,栄養補助食品に使用されるβ-アラニンが嫌気性作業能力を増強することに関連する特許を保有しており,このうち6件の特許(対象特許)の侵害を理由に,Creative Compounds, LLC(C社)を地裁に提訴した。C社は,対象特許が特許適格性を有さないと主張し,訴答に基づく判決を求める申立てを行った。 地裁はこれを認め,Alice最高裁判決(Alice Corp. Pty. Ltd. v. CLS Bank. Intl., 134 S. Ct. 2347(2014))で示された2段階テストに基づいて,対象特許の特許適格性を否定した。 すなわち,あるレベルのβ-アラニンすなわち天然物の摂取が人組織中のカルノシンの濃度を増加させ,人の嫌気性作業能力を増強させるであろうことは自然法則であるとして,2段階 テストのステップ1において特許法101条の例外に当てはまり,さらに,特許適格性に十分な発明概念も欠いているとした。
 N社はCAFCに控訴した。  

[CAFCの判断]

 CAFCは,地裁の判断は誤ったクレーム解釈に依拠したものであるとした。
 CAFCは,Vanda判決(Vanda Pharmaceuticals Inc. v. West-Ward Pharmaceuticals Int’l, Ltd., 887 F.3d 1117 (Fed. Cir. 2018))を引用し,特定の治療方法を目的とする場合は,特許適格性があると判示した。すなわち,Vanda判決では,特定の患者に特定の物質を特定量使用し,特定の結果に達する方法を示した特許クレームは,特定の治療方法として特許適格性があると認定した。対象特許の方法クレームも,天然物を自然に存在するレベルをはるかに超える量で投与し,患者の状態に変化を与えるものであるから,Vanda判決と同様に治療方法のクレームであると認定した。
 さらに,CAFCは地裁のステップ2における判断についても不適当であることを指摘した。すなわち,対象特許のクレームはβ-アラニンが栄養補助食品を通して供給されることを必要としており,栄養補助食品は,人の食餌の付加物として,自然や慣習的な食物ではないものと解釈される。通常,栄養補助食品は不足した栄養素を補うものであるから,β-アラニンを 通常レベルより多く投与するクレームの栄養補助食品は,2段階テストのステップ2における「よく理解されており,日常的であり,慣習的なものである」と結論付けることができない。
 以上の理由から,対象特許は特許法101条に基づく特許適格性を有するとして,CAFCは,地裁の判決を破棄し,差戻した。

(上原 悠子)

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