専門委員会成果物

検査結果に基づき投与量を調整する治療方法クレームが特許適格性を有すると認められた事例

CAFC判決 2019年3月28日
Endo Pharmaceuticals Inc., et al. v. Teva Pharmaceuticals USA, Inc., et al.

[経緯]

 Endo Pharmaceuticals Inc.(E社)は,『「(1)特定の化合物を特定量で含有する薬剤を提供する工程」,「(2)患者のクレアチニンクリアランス(腎臓が身体の老廃物を排泄する能力) を測定する工程」,及び「(3)クレアチニンクリアランスに応じた低用量を患者に投与する工程」に係る特定の治療工程を含む腎機能障害患者における疼痛の治療方法』に関する特許8,808,737(’737特許) を保有している。E社は,Actavis Pharma, Inc.(A社)及びTeva Pharmaceuticals USA, Inc.(T社)らが’737特許を侵害するとして特許侵害訴訟を地裁に提訴した。
 E社の訴えに対して,A社は,’737特許のクレームは,特許法101条に係る特許適格性を有していないと主張し,E社の訴えを棄却する旨を申立てた。地裁は,この申立てを裁可し,続いて, 下級判事によるAlice/Mayo testのStep1及びStep2を用いた認定を支持し,’737特許のクレームはMayo判決に代表される特許適格性を有しないクレームに該当するものとして,E社の訴えを棄却する 判決を下した。E社は,この判決を不服とし,CAFCに控訴した。        

[CAFCの判断]

 CAFCは下記の通り,’737特許は特許適格性を有すると判断し,地裁の判決を棄却した。
 CAFCは,’737特許のクレームは,「治療方法クレームである点」,「検査に基づき投与計画を実行する点」及び「特定の治療工程を要する点」で,Vanda CAFC判決 (Vanda Pharmamaceuticals Inc. v. West-Ward Pharmaceuticals International Ltd., 887 F.3d 1117(Fed. Cir. 2018))にて特許適格性を有すると判断されたVanda社の 特許クレームと酷似していると判断した。CAFCは,’737特許のクレームは,「特定の結果を得るために,特定の化合物を,特定の用量で使用した,特定患者の治療方法」に 関するものであるため,特許適格性を有すると判断し,特許法101条に関連する他の判決を参照しても,異なる結論を導き出す余地はないとして,地裁の判決を棄却した。  

(臼井 伸也)

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