専門委員会成果物

抽象的概念を含むクレームは特許適格性を有しないとして連邦民事訴訟規則12条(b)(6)の下で訴えが却下された事例

CAFC判決 2019年3月28日
ChargePoint, Inc. v. SemaConnect, Inc.

[経緯]

 ChargePoint, Inc.(C社)は,電気自動車のバッテリに電力を供給するネットワークに接続された充電ステーションに関する特許8,138,715他(包括して,該特許)を保有する特許権者である。 C社は,該特許を侵害するとして,SemaConnect, Inc.(S社)を特許権侵害を地裁に提訴した。S社は,該特許のクレームは特許法101条に係る特許適格性を有しないとして, 連邦民事訴訟規則12条(b)(6)に基づく訴え却下の申立てを行い,地裁はこの申立てを認め,C社の訴えを棄却した。C社はこれを不服として,CAFCに控訴した。         

[CAFCの判断]

 CAFCは,該特許のクレームは,特許適格性を有しないとして訴えを棄却した地裁の決定を支持した。
 審理に於いてCAFCは,Mayo/Aliceの2ステップテストに基づき,特許適格性を分析した。クレームが判例法による例外(judicial exception)に関するか否かを判定するステップについてCAFCは, 該特許のクレームは,従来の充電ステーションにネットワーク機能を付加しただけであり,クレームの焦点は,デバイスが相互作用するためのネットワーク通信という抽象的な概念であると判断した。 加えて,クレームの広さを考えれば,ネットワーク接続されたあらゆる充電ステーションを先取(preempt)することから,クレームは判例法による例外に該当するとCAFCは判断した。
 続いて,判例法による例外を有意に超える(significantly more)要素がクレームに含まれている場合は特許適格性を有すると判定するステップについてC社は,該クレームが ネットワーク制御された充電ステーションによってこの分野の従来の課題を解決していることを理由として,判例法による例外を有意に超える要素を含むと主張した。
 しかし,CAFCは,ネットワーク制御自体は抽象的な概念であり,ネットワーク制御された充電ステーションは,従来と異なる方法を含んでおらず,単にネットワーク通信を含むことが 唯一の発明要素であると指摘し,判例法による例外を有意に超える要素が含まれていない,と判断した。以上の判断に基づき,CAFCは該特許が特許適格性を有しないと判断し,地裁の決定を維持した。    

(丸山 佳彦)

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