専門委員会成果物

地裁で認められた1,500万ドルの損害賠償判決について,CAFCによって一部差し戻し,再審が必要と判断された事例

CAFC判決 2019年4月8日
Omega Patents, LLC, v. CalAmp Corporation

[経緯]

 Omega Patents, LLC(O社)は,様々な自動車機能(すなわち,遠隔からの発車など)の遠隔からの監視および制御に関する特許6,346,876(’876特許),特許6,756,885(’885特許),特許7,671,727 (’727特許),特許8,032,278(’278特許)を保有している。CalAmp Corporation(C社)は,車両を監視し追跡するためのビジネスなどを行うものなどに対してテレマティックス事業を行っている。 O社は,C社が販売する製品が,該特許全てを侵害するとして特許侵害訴訟を地裁に提訴した。
 地裁のトライアルにおいて陪審員は,O社の特許全ては有効であるとして,C社が該特許を侵害しているとし,補償的損害賠償として2.98万ドルを裁定した。陪審員は故意侵害も認め, これを受けて地裁は三倍賠償を命じ,弁護士費用賠償も裁定した。最終的な損害賠償額は,現在支払われているロイヤルティーに加え1,500万ドルとなった。この判決を不服として,C社はCAFCに控訴した。  

[CAFCの判断]

 CAFCは,地裁が“C社がした該特許全てが無効であるとの抗弁は,追加の先行文献を含みうる”という解釈を採用したことが陪審員のクレーム解釈に判断に影響したとC社が主張したことについて, 連邦民事訴訟規則46および,証拠不十分な内容であることから議論の余地はないとして,該特許全ての全クレームが有効であるとした,地裁の判決を支持した。
 CAFCは,直接侵害を認めるとした地裁の判決について,’727特許のクレーム11については,C社の証人はC社のおよそ5%の製品がコミュニケーションバスを使用していると証言しており, これは陪審員がある環境下ではC社が’727特許のクレーム11を直接侵害すると判断するに十分な証拠であるとして地裁の判決を支持した。一方,’876特許および’885特許の直接侵害に対する C社の反論については,C社の製品は携帯基地局を送信機および受信機として使用しているが携帯基地局は提供していないことより,地裁の判決を破棄した。
 CAFCは,’876特許および’885特許のクレームにおける誘導侵害について,陪審員が不正確なクレーム解釈によって侵害を判断したかを決定づけることはできないとし,地裁の判決を破棄し, 差し戻した。さらにCAFCは,C社が製品を販売する際にO社の特許を侵害していないと信じるに合理的な理由があり誘導侵害はないと反論するための証言が地裁により排除されていたとして, 地裁の判決を破棄し,再審のために差し戻した。
 CAFCは,C社の製品は追加のプログラミングと共にのみ侵害しうるもので,C社のデバイスのどのサブセットに必要なプログラムがインストールされているかを示す証拠がないとして, 損害賠償の判決を破棄し,再審のために差し戻した。また,故意侵害についても地裁のC社の証言の採用に不適切な点があったとして三倍賠償および弁護士費用賠償とともに,判決を破棄し,差し戻した。        

(吉田 美和)

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