専門委員会成果物

電子取引方法を主題とする特許について,CBMに係る適格性を認め,特許法101条に係る特許適格性を有していないと判断された事例

CAFC判決 2019年4月18日
Trading Technologies International, Inc. v. IBG LLC, et al.

[経緯]

 Trading Technologies International, Inc.(T社)が所有する,電子取引方法のグラフィカルユーザインターフェース(GUI)に関する特許7,533,056,特許7,212,999,特許7,904,374(包括して,該特許) に対して,IBG LLC等は,金融商品・サービス関連のビジネス方法特許に関するCovered Business Method(CBM)Reviewを申請した。これに対し,特許審判部(PTAB)は,該特許はいずれもCBM Reviewの 対象として適格性を有し,特許法101条に係る特許適格性を有していないとの決定を下した。T社はこの決定を不服として,CAFCに控訴した。     

[CAFCの判断]

 CAFCは,CBMに係る適格性および特許法101条に係る特許適格性それぞれを判断した。
 先ず,CBMに係る適格性について,該特許はいずれもコンピュータを使用した金融取引方法に関するものであり,技術的問題に対する技術的解決策ではないため,CBM Reviewの対象となることは適切であるから, CBMに係る適格性を有する,とCAFCは判断した。
 次に,特許法101条に係る特許適格性について,CAFCはAliceの2ステップテストに基づいて判断した。該特許を対象としてAliceの2ステップテストを行う中Aliceの第1ステップでは, クレームは抽象的概念に向けられたものであるとして,続く第2ステップでは,抽象的概念に向けられたクレームは独創的な概念を含まないと判断した。例えば,特許7,212,999は,電子取引に おいてトレーダーが注文をするのを支援するために,呼値をグラフ化または表示するという抽象的概念に向けられたクレームであるが,市場情報を受信することは単なる日常的なデータ収集であり, スケールされた価格軸に沿って指標として情報表示することは日常的な従来の作業であるため,これらの要素を個別にまたは順序付けられた組合せとして考慮しても,抽象的概念を,特許適格性を 有する発明に変換するのに十分な発明概念を含んでないと判断した。
 以上から,CAFCは,該特許はいずれもCBMに係る適格性を有し,また,特許法101条に係る特許適格性を有しないと判断し,PTABの最終決定を維持した。      

(杉山 大輔)

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