専門委員会成果物

米国食品医薬品局による不純物濃度の基準は,その達成手段を教示するものではないと判断された事例

CAFC判決 2019年5月3日
Endo Pharmaceuticals Inc., et al. v. Actavis LLC, et al.

[経緯]

 Endo Pharmaceuticals Inc.他は,Actavis LLC他(A社)が提出した新薬申請が,米国特許8,871,779(’779特許)を侵害するとしてA社を地裁に訴えた。
 ’779特許は,鎮痛成分として広く使用されるオキシモルフォンに関する。クレームは,オキシモルフォンのα,β-不飽和ケトン中間体化合物(ABUK)である14-ヒドロキシモルフィノンの 含有量が0.001%以下であるオキシモルフォン塩酸塩を規定している。地裁は,3つの先行技術文献と,米国食品医薬品局(FDA)がオキシモルフォン製品におけるABUKの含有量を0.001%(10ppm) 以下にする通達をしていることを検討したが,A社が,クレームが自明で無効であると立証できていないと判示した。
 A社は,地裁の判断に対し異議を主張し,CAFCに控訴した。    

[CAFCの判断]

 CAFCは,地裁の自明性の判断に明確な誤りは認められないとして,地裁の判決を支持した。
 FDAの通達は,本願クレームで規定する純度のオキシモルフォンの精製を促すものである。しかし通達にはオキシモルフォンのABUKの濃度を実際に達成する手段について教示はない。 さらに,他の先行文献にはオキシモルフォンの製造方法が開示されているが,FDAの通達に記載されている高純度のオキシモルフォンを得ることが困難であり,実行可能な解決方法の記載は示されていない。従って,当業者はこれらの開示された方法から,FDAの命ずるオキシモルフォンの純度レベルを達成できるという合理的な期待を欠くとして,’779特許は自明ではないと判断した。

(下尾 祐未)

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