専門委員会成果物

IPRにおいて,州の主権免除特権は適用されないと判示した事例

CAFC判決 2019年6月14日
Regents of the University of Minnesota v. LSI Corporation, et al.

[経緯]

 LSI Corporationら(L社)は,ミネソタ州の一部門であり公的研究機関であるRegents of the University of Minnesota(M大学)が保有する特許に対して,当事者系レビュー(Inter partes review (IPR))を請願した。
 当該IPRの請願後且つUSPTOが審理の開始を決定する前に,M大学は,State Sovereign Immunity(州の主権免除特権)に基づき当該IPRの請願は却下されるべき旨を申し立てた。申立に対し,USPTOは, expanded panel(拡大合議体)を招集し,州の主権免除特権はIPRにおいても適用されるものの,地裁においてM大学がIPR請願人に対し訴訟を提起したことにより州の主権免除特権を放棄したものと判断した。
 M大学は,この決定を不服として,CAFCに控訴した。       

[CAFCの判断]

 CAFCは,地裁において特許権者がIPR請願人に対し訴訟を提起したかどうかに関わらず,IPRにおいて州の主権免除特権は適用されないと判断した。
 M大学は,部族の主権免除特権をIPRにおいて主張することはできないと判示したSaint Regis判決(Saint Regis Mohawk Tribe v. Mylan Pharmaceuticals Inc., 896 F.3d 1322, 1325)と本控訴には顕著な違いがあることを主張した。
 しかしながらCAFCは,Saint Regis判決で示されたように,IPRは行政執行機関が第三者から提供された情報に基づき付与後の特許について再検討するために適切とみなされていること,また,主権免除特権についての部族と州との違いはSaint Regis判決とは異なる結果を保証するものではないことから,IPRにおいて州の主権免除特権は適用されないと判断した。

(森山 智史)

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