専門委員会成果物

特許製品に対する過去の投資が,ITCの国内産業要件を満たすと判示された事例

CAFC判決 2019年6月17日
Hyosung TNS Inc., et al. v. ITC

[経緯]

 Diebold(D社)は,Hyosung TNS Inc.(H社)の輸入製品によって,D社が保有する現金自動預け払い機システム(ATM)に関する2つの特許6,082,616(’616特許),及び特許7,832,631(’631特許)を侵害されたとしてITCに訴えを提起した。ITCは,H社の輸入製品が両特許を侵害していたこと,両特許の無効が示されなかったこと,及び両特許の 請求内容を実施するD社は米国関税法第337条の国内産業要件を満たしていたことから,D社の訴えを認め,H社に対して限定的排除命令と停止命令を決定した。H社はこの決定を不服として控訴した。         

[CAFCの判断]

 控訴審において,H社は,2005年から2010年の間に行われたこれらの製品に対するD社の投資(数百万ドル規模の研究開発費)は,2015年にD社がITCへ提訴する5年も前に行われた為,米国関税法第337条に基づく国内産業要件の経済要件を満たしていないと主張した。
 これに対しCAFCは,確かに過去の投資は国内産業の存続に対する関連性が弱いかもしれないが,過去の投資が現在行われている現場サービス,及び組み立て費用と関連しているため,国内産業要件の経済要件を満たす可能性があるというITCの決定に法的な誤りはないとして,H社の主張を退けた。
 そして,過去の投資が国内産業要件の主張を支持する場合として,以下2点を示した。(1)その投資が主張された特許の対象となる製品に関連する場合,及び(2)当該製品に関連する投資を継続して行っている場合,である。
 D社において,2005年から2010年の投資は当該特許の対象製品に直接関連しており,さらにITCへの訴えまでに対象製品の保守及び組立費用を負担し続けていた。そのため,CAFCは,国内産業要件を支持する証拠が多数あり,国内産業要件の経済要件を満たすと判断した。

(高畑 匡宏)

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