専門委員会成果物

クレームに発明性を与える概念が記載されているなら,クレームされた構造が従来技術ではないことを示す理由の全てが明細書中に明確に列挙されている必要はないと判断された事例

CAFC判決 2019年6月25日
Cellspin Soft, Inc. v. Fitbit, Inc., et al.

[経緯]

 Cellspin Soft, Inc.(C社)は,C社が所有する特許8,738,794他4件(該特許)を侵害するとしてFitbit, Inc.他(F社)を訴えた。該特許は,データキャプチャデバイスをモバイル デバイスに接続して,キャプチャしたコンテンツをデータキャプチャデバイスからWebサイトに自動的に公開する発明に関する。
 F社は,該特許に含まれるクレームが,特許法101条に係る特許適格性を有していないとして,連邦民事訴訟規則12(b)(6)に基づく訴え却下の申し立てを行った。地裁はAlice/Mayoの 2ステップテストのもと,該特許に関して特許法101条の特許適格性を欠いていると結論付け,この申し立てを認め,C社の訴えを棄却すると共に,特許法285条に基づき,F社の弁護士費用の負担をC社に命じた。
 C社はこれを不服として,CAFCに控訴した。       

[CAFCの判断]

 CAFCは,該特許に含まれるクレームが,特許適格性を有さないとした地裁の決定が誤っていると判断した。
 CAFCは,Alice/Mayoの2ステップテストに基づき,該特許のクレームを分析した。ステップ1については,該特許のクレームは,データの収集,転送,および公開に係る記載であり, 抽象的概念に向けられたものであるとの地裁の判断に同意した。しかし,続くステップ2において,CAFCは,クレームに発明性を与える概念が記載されているなら,クレームされた構造が 従来技術ではないことを示す理由の全てが明細書中に明確に列挙されている必要はないとした。その上で,該特許に含まれるクレームに係る発明が独創性を欠いていないというC社の主張を, 具体的な事実,例えばデータが伝送される前に接続を要する2ステップ2デバイス構造を有する点など,に基づく妥当な主張だと判断した。
 CAFCは,地裁がC社の主張を真実として受け入れないのは誤りであり,該特許に含まれるクレームが特許適格性を欠いていると結論付けることは出来ないとして,地裁が訴え却下の 申し立てを認めた決定と弁護士費用の負担の決定を棄却し,地裁に差し戻した。

(毛利 直人)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.