専門委員会成果物

「tangential exception」の適用なく包袋禁反言は認められず均等侵害が支持された事例

CAFC判決 2019年8月9日
Eli Lilly & Company v. Hospira Inc.

[経緯]

  Eli Lilly & Company(E社)は,非小細胞肺がんおよび中皮腫の治療用商品としてペメトレキセド化合物のナトリウム塩を商品名「Alimta®」で販売している。 E社は上記化合物に関し,葉酸とペメトレキセド二ナトリウムの患者への投薬方法に関する特許7,772,209(’209特許)を保有している。
 一方,Hospira Inc.(H社)およびDr. Reddy’s Laboratories Inc.(R社)は,上記化合物とは異なるペメトレキセド化合物のナトリウム塩である ペメトラキセドジトロメタシンを販売する為に新薬承認申請をした。E社は,H社及びR社が’209特許を侵害しているとして,特許侵害訴訟を地裁に提訴した。
 包袋禁反言により均等侵害はないとするR社の主張に対し,地裁は以下の様に判示した。審査過程においてE社が行った「アンチフォレートを ペメトレキセド二ナトリウムに減縮する補正」は,引例に開示された他の葉酸薬との区別をすることが目的であり,地裁は均等侵害であると判断し,R社の主張を却下した。
 地裁が,均等侵害が成立すると判断した点は法律上の誤りがあり,H社およびR社は,自社の製品が’209特許のクレームを均等侵害しているとする地裁の判断を不服とし,CAFCに控訴した。        

[CAFCの判断]

 E社が行った上記補正は実質的に争点となっている均等物(ペメトレキセドジトロメタミン)に関与せず,「tangential exception」は適用されないと,CAFCは判断した。従って,ペメトレキセドジトロメタミンが均等の範囲外であるとするH社およびR社の主張は認められないと判断した。よって,CAFCは地裁によるH社およびR社の’209特許の均等侵害の判断を支持した。

(野崎 祐志)

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