専門委員会成果物

訴答段階で特許適格性を争う当事者が,クレーム解釈について争った場合,地裁は特許適格性を判断する前にクレーム解釈をすべきとした事例

CAFC判決 2019年8月16日
MyMail, Ltd. v. ooVoo, LLC, et al.

[経緯]

 MyMail, Ltd.(M社)は,「特定の工程を含むツールバーの変更方法」に関する特許8,275,863(’863特許)及び特許9,021,070(’070特許)を保有している。M社は,ooVoo, LLC(O社) 及びIAC Search & Media, Inc.(I社)が,’863特許及び’070特許を侵害するとして,カルフォルニア州北部連邦地裁(当地裁)に,特許侵害訴訟を提訴したM社の訴えに対して,O社及びI社は,訴答書面にて,’863特許及び’070特許のクレームは,特許法101条における特許適格性を満たしていないと主張した。これに対してM社は,テキサス州東部連邦地裁における,’070特許クレームに含まれる用語「ツールバー」の解釈に基づき,’863特許及び’070特許は特許適格である旨を主張した。O社及びI社は上記クレーム解釈に反論した。
 当地裁において,特許クレームに含まれる用語「ツールバー」が一般的なものでなく,特許クレームが特許適格性を満たす特定の技術工程に関するものなのか,当事者間に争いが存在した。しかしながら当地裁は,この争いについて議論することなく,Alice testのStep1及びStep2に基づき,’863特許及び’070特許は特許不適格で無効であるとして,M社の訴えを棄却した。M社は,上記判決を不服としCAFCに控訴した。  

[CAFCの判断]

 CAFCは以下の判断を行い,当地裁の判決を棄却し事件を地裁に差し戻した。
 CAFCは,特許適格性を判断するには,特許クレームに関する主題について基本的な特徴を完全に理解する必要があるとした。そして,特許適格性について争う当事者が,訴答段階(Rule12(c))においてクレーム解釈についての争いを提起した場合,以下の手続きをする必要があるとした。すなわち,地裁は特許法101条の分析を行うために必要な範囲で,申立当事者ではない第三者によるクレーム解釈を採用するか,クレーム解釈についての当事者間の争いを解決しなければならない。
 CAFCは,本地裁が’863特許及び’070特許が特許不適格であると結論付ける前に,クレーム解釈に関する争いに対処しなかったことで誤った決定を下したと認定した。
よって,CAFCは地裁の判決を棄却し,事件を当地裁に差し戻した。

(臼井 伸也)

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