専門委員会成果物

明細書全体の記載と審査経過を参酌し,wherein節がクレームを制限するものであると判断した事例

CAFC判決 2019年8月29日
Allergan Sales, LLC, et al. v. Sandoz, Inc., et al.

[経緯]

 Sandoz, Inc.(S社)がAllergan Sales, LLC(A社)の眼薬のジェネリックを新薬承認申請(ANDA)したことに対し,A社は特許9,770,453他複数の特許を侵害するとして,S社を地裁に訴えた。
 係争中の特許は明細を共有しており,クレームには,有効性について述べたwherein節と安全性について述べたwherein節が含まれていた。地裁は,wherein節がクレームを制限するものと判断し,A社の仮差し止めの申立を認めた。
 これに対してS社は上訴した。その際S社は,wherein節は単に眼薬の投与の結果を表しているにすぎず,また,当該結果は特許性を判断するうえで重要ではないと主張した。      

[CAFCの判断]

 クレームを解釈する際には明細書全体の記載と審査経過を参酌する必要がある。
 係争中の特許の明細書には,クレームの発明が,結局のところ有効性と安全性の向上,すなわち有害事象のリスク低減を可能とする製剤(およびその製剤の使用方法)であることが示されている。これらの利点については,先行技術の局所眼科治療を引用して明細書中で説明されており,クレームの方法が有効性と安全性の両方で優れていることが結論付けられている。すなわち本明細書は,クレームされた方法の有効性と安全性の向上が特許性を判断するうえで重要であるというA社の主張を裏付けている。
 また,A社は審査官による拒絶理由に対応した際に,クレームされた方法の有効性と安全性を根拠に応答した。審査官も,本特許のクレームが「従来技術に対して新規かつ非自明である」理由を説明する際,wherein節に明示的に依拠した。従って審査経過からも,wherein節に反映されている製剤の有効性と安全性の記載が,クレームされた方法を定義するため,かつ従来技術と区別するために使われていることは明らかである。
 CAFCは,本質的な証拠を検討した結果,wherein節は特許性を判断するうえで重要であり,ゆえにクレームを制限するものであると判断し,地裁の判決を支持した。

(孫 天益)

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