専門委員会成果物

クレームの個々の構成要素は既知であっても,構成要素の組み合わせが新規であれば二次的考慮事項における発明との「関連性」を満たすとした事例

CAFC判決 2019年9月12日
Henny Penny Corporation v. Frymaster LLC

[経緯]

 Frymaster LLC(F社)は食用油の劣化測定システムに関する特許8,4987,691(’691特許)を有している。食用油は使用するにつれて,Total Polar Materials(TPM)と呼ばれる不純物が蓄積する。 ’691特許の発明は,このTPMを測定するセンサーを使用して揚げ物用鍋中の油の劣化を観測するシステムである。
 Henny Penny Corporation(H社)は,’691特許に対して,文献Kauffmanと文献Iwaguchiに基づき自明であるとして,IPRを申請した。
 文献Kauffmanには,揚げ物用鍋等の機材で使用する使用済み油等の流体の分析装置を開示しているものの,TPMの観測については言及されていなかった。また,分析可能な温度は400℃までと示されていた。
 文献Iwaguchiは,揚げ物用鍋中の油の劣化を観測するためのTPM測定装置を開示しているものの,TPMを測定する前に油の温度を下げてTPMセンサーの熱応力を緩和するために,放熱管を通して油をセンサーのある容器に転送することが説明されていた。
 PTABは,当業者が,文献Iwaguchiの冷却が必要なTPMセンサーを文献Kauffmanのシステムに組み合わせる動機付けはないと判断した。
 また,PTABは,二次的考慮として,F社はTPMセンサーの製品を市場に出し,2つの産業賞を受けており,クレームはこの賞を受けた製品にふさわしい範囲であるため,’691特許が非自明であることを裏付けていると認定した。
 H社は控訴した。     

[CAFCの判断]

 CAFCは,文献Kauffmanと文献Iwaguchiを組み合わせる動機付けはないとして’691特許は非自明であり,また,二次的考慮の証拠が非自明性を裏付けるとするPTABの判断を支持した。
 二次的考慮の証拠が自明性の判断において十分なウエイトをもつためには,特許発明と法的かつ事実的な「関連性(nexus)」がなければならない。2つの産業賞はともにF社製品中のTPMセンサーに対するものであり,クレームはこの賞を受けた製品にふさわしい範囲のものであるとした。
 H社は,賞の対象であるTPMセンサーを組み合わせた揚げ物用鍋は文献Iwaguchiに示唆されているため,二次的考慮の証拠である産業賞と特許発明との関連性を欠いていると主張した。 しかしCAFCは,二つの産業賞はクレームの発明全体に向けられたものであり,その特許クレームの特定の組み合わせをIwaguchiは示していないと判断したPTABの考えを支持し,H社の主張を認めなかった。

(高見 亮次)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.