専門委員会成果物

PTABは訂正証明書の発行可否を決定する権限を有しないことを判示した事例

CAFC判決 2019年10月1日
Honeywell International Inc. v. Arkema Inc., et al.

[経緯]

 Honeywell International Inc.(H社)は,冷却システムで使用される冷媒組成物に関する特許を保有している。
 Arkema Inc.(A社)は,当該特許と2002年に出願された基礎出願との優先権の連鎖(priority chain)に誤りが あるため,出願日の2014年が優先日となりpost-AIAが適用されると主張して,PTABに付与後異議申立(PGR)を 請願した。
 本PGRにおいてH社は,当該特許の優先権の連鎖を訂正することを目的として,訂正証明書の発行を 申し立てたが,PTABは申立を却下し,当該特許は無効と決定した。
 H社は,この決定を不服として,CAFCに控訴した。    

[CAFCの判断]

 CAFCは,H社が申し立てた訂正証明書発行をPTABが却下したことは,PTABの裁量の濫用であり誤りであるとし, PTABによる最終決定を破棄して差し戻した。
 CAFCは,優先権の連鎖についての誤りが不注意によるものであって,訂正は善意に基づきなされるもので あったかについて,PTABが証拠に基づいて判断していないことを指摘した。またCAFCは,H社が例示した 訂正証明書の発行が認められた判例と本申立との差異につき,PTABが根拠を示して見解を述べていないことを 指摘した。
 以上からCAFCは,差し戻し審においてH社による訂正証明書の発行の申立をPTABは許可すべきと示唆した上で, 再検討を要請した。

(森山 智史)

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