専門委員会成果物

所望の結果を得るための具体的な構造や手法を示していないクレームが,単なる自然法則の適用に過ぎないと判断された事例

CAFC判決 2019年10月3日
American Axle & Manufacturing, Inc. v. Neapco Holdings LLC, et al.

[経緯]

 American Axle & Manufacturing, Inc.(A社)は,複数種の振動を同時に抑制する“ライナー”を備えた 駆動系プロペラシャフトの製造方法に関する特許を保有している。A社は,Neapco Holdings, LLC(N社) が該特許を侵害するとして特許侵害訴訟を地裁に提訴した。
 地裁は該特許のクレームは,振動を抑制するためのライナーの製造方法について,具体的な構造や手法を 示しておらず,フックの法則や摩擦減衰といった,単なる自然法則の適用に過ぎないとして,特許法101条 の特許適格性を欠いていると判断し,該特許は無効であるとの略式判決を下した。
 この略式判決を不服として,A社はCAFCに控訴した。    

[CAFCの判断]

 CAFCは,Alice/Mayoの2ステップテストに基づき,ステップ1において,該特許のクレームはフックの 法則や摩擦減衰といった自然法則の適用に過ぎないとした地裁の判断に同意した。更にCAFCは,従来技術に 対してクレームされた“改良”の焦点は,複数の振動を抑制するようにライナーの質量や剛性を調整する点に あると判断したうえで,調整する行為自体は複雑かもしれないが,新しいコンピュータモデリングや実験モード 解析の詳細について,該特許の明細書に記載されておらず,クレームにも,振動を抑制するように,ライナーの 質量や剛性を調整する具体的な構造や手法を示していないと判断した。続くステップ2において,CAFCは該 特許のクレームについて,特許適格性を与えるのに十分な発明的概念を見つけられないと判断した。該特許の クレームにある付加的限定は,ライナーの様々な既知の特性を単に調整する試行錯誤のプロセスに向けられており, 調整のプロセスが対象とする望ましい結果が新しく型破りなものであっても,発明的概念を有さないと判断した。
 以上から,CAFCは,該特許に含まれるクレームが,特許法101条の特許適格性を欠いているとの地裁の略式判決を 支持した。

(毛利 直人)

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