専門委員会成果物

訴訟対象特許が無効になったことにより,訴訟が訴訟性を喪失したことで取下げられたとしても,被告は勝訴した当事者であり,訴訟費用の返還を受けることができると判示した事例

CAFC判決 2019年10月9日
B.E. Technology, L.L.C. v. Facebook, Inc.

[経緯]

 B.E. Technology, L.L.C.(B社)は,2012年9月7日に,自身の保有する広告提供方法に関する特許に基づき, Facebook, Inc.(F社)に対して特許侵害訴訟を提起した。
 これに対し,F社及び他2社は,該特許を対象とする複数のIPRを請願した。PTABは該特許を無効とする 決定を下し,この決定を不服としてB社がCAFCに控訴したところ,CAFCはPTABの決定を維持する判決を下した。
 F社はCAFCの判決を受けて,地裁において,確定的な効果をもっての(with prejudice)による訴訟取下の 判決を求める申立を起こした。これに対しB社は,訴訟性を喪失したこと(mootness)による取下であるべき であると主張した。地裁は,B社の主張に同意し,訴訟性を喪失したことによる訴訟取下命令を出した。
 F社は,取下命令の後,訴訟費用の返還を求める申立を提出した。地裁はCRST最高裁判決(194 L. Ed. 2d 707(2016))を引用して,「F社は勝訴した当事者(prevailing party)であり,故にB社は,連邦 民事規則54(d)(1)に基づき,訴訟費用(弁護士費用を含まない)を支払うべきである」との決定を出した。
 B社はこの判決を不服として,CAFCに控訴した。    

[CAFCの判断]

 B社は,地裁の取下判決は,「訴訟性を喪失したこと」による取下であるため,F社が「勝訴した当事者」とは ならない。したがって,訴訟費用の支払い決定に必要な司法上の許可(judicial imprimatur)が不足していると 主張した。
 CAFCは,「勝訴した当事者」の解釈が争点であるとした。CAFCは,この解釈のために,訴訟費用の返還と 弁護士費用の返還において,「勝訴した当事者」についてはこれまで統一した判断をしていたことを前提に, 地裁と同様に訴訟が手続上の理由で却下されたとしても,被告は「勝訴当事者」とみなすことができるとする, CRST最高裁判決を参照した。
 CAFCは,CRST最高裁判決を参照すると,訴訟が「訴訟性を喪失したこと」で取下げられたため,F社は 確定的な判決を得てはいないが,実質的に自らの求めた結果を得た「勝訴した当事者」であるとみなせるとし, 地裁の決定を維持し,F社は,訴訟費用の返還を受けられるとした。

(渡邊 英行)

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