専門委員会成果物

“consisting essentially of”を用いたクレームの明確性の判断に,基本的で新規な発明の特徴の明確性を考慮することを判示した事例

CAFC判決 2019年10月10日
HZNP Medicines LLC, et al. v. Actavis Laboratories UT, Inc.

[経緯]

 骨関節炎治療のための組成物及び方法に関する12件の特許を保有するHZNP Medicines LLC及びHorizon Pharma USA, Inc.(H社)は,Actavis Laboratories UT, Inc.(A社)が当該特許を侵害するとして特許侵害訴訟を地裁に提訴 した。ここで,当該特許の一部のクレームは,“consisting essentially of”を用いて骨関節炎治療のための 組成物の材料が列挙されていた。
 地裁は,PPG事件(PPG Indus. v. Guardian Indus. Corp., 156 F.3d 1351, 1354)を引用して,“consisting essentially of”を用いたクレームの権利範囲は,列挙された材料を含む組成物であっても,基本的で新規な発明の 特徴に影響を与える他の材料を含むものは権利範囲に含まれないと示した。地裁は更に,Nautilus事件(Nautilus, Inc. v. Biosig Instruments, Inc., 572 U.S. 898, 910)を引用して,基本的で新規な発明の特徴は,クレーム 解釈で決定されると示した。この上で地裁は,当該特許のクレーム解釈において,内的証拠に基づき,いくつかの 基本的で新規な発明の特徴は不明確であるため,当該“consisting essentially of”を用いたクレームは無効と 決定した。
 この判決を不服として,H社はCAFCに控訴した。    

[CAFCの判断]

 CAFCは,以下の理由により,地裁の当該結論を支持した。
 H社は,基本的で新規な発明の特徴を決定することは,事実問題を含むため,クレーム解釈によって判断される べきではないと主張した。しかし,CAFCは,PPG事件などは,クレーム解釈において基本的で新規な発明の特徴を 決定したため,H社の主張を否認した。
 さらに,H社は,Nautilus事件に基づき,クレームの明確性の判断は,クレームが明確であるかが対象であり, 基本的で新規な発明の特徴の明確性は考慮すべきではないと主張した。しかし,CAFCは,クレームが明確で あるためには,基本的で新規な発明の特徴も明確である必要があるため,基本的で新規な発明の特徴の明確性を 考慮すべきであると決定し,H社の主張を否認した。
 上述の理由により,CAFCは,地裁の当該判決を支持した。

(山本 達也)

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