専門委員会成果物

従来技術を改善する特定手段がクレームに示されることで抽象的概念にあたらないと判断した事例

CAFC判決 2019年11月15日
Koninklijke KPN N.V. v. Gemalto M2M GmbH, et al.

[経緯]

 Koninklijke KPN N.V.(K社)は,データ伝送におけるエラーチェックに関する特許6,212,662(’662特許)を 保有する。
 K社は,Gemalto M2M GmbHら数社(G社)を特許権侵害として地裁に提訴した。被控訴人らは,’662特許のクレームは特許法101条に係る特許適格性を有しないとして,連邦民事訴訟規則12条(c)に基づく訴答の判決を求め,地裁はこの申立てを認めた。
 K社は判決を不服としてCAFCに控訴した。    

[CAFCの判断]

 CAFCは,従来技術とクレームとの関係を検討したうえで,Aliceの2ステップテストに基づき特許適格性を審理した。
 まず従来技術について,データ伝送では,送信および受信データに基づくチェックデータを生成し,このチェックデータが送受信の前後で一致するか否かで送信エラーの有無を判断することが一般的に行われている。 ところが,継続的に欠陥のあるチェックデータが生成されてしまい,送信エラーの有無が正しく判断できない問題があった。この問題に対する’662特許のクレームは,データブロックの順列を適時に変更したうえでチェックデータを生成することに特徴があり,これにより同じ欠陥のあるチェックデータが毎回生成されないようにしている。
 CAFCは,Aliceテストのステップ1において,クレームの元データに適用される順列を適時に変更するという点が,データ送信エラーチェックの従来技術プロセスに対する非抽象的な改善にあたり,特許適格性を有すると判断した。
 これに対して被控訴人らは,生成されたチェックデータを使用してエラー検出を実行する手順が最後まで示されていないことから,クレームは抽象的概念にあたると主張した。CAFCは,クレームが従来検出できなかった系統的なエラーを検出するという目的を達成するために,データブロックの順列を適時に変更したうえでチェックデータが生成されるという特定の解決策を示していると認定し,クレームが,Aliceのステップ1における抽象的概念には該当しないと判断した。
 この判断に基づき,CAFCはステップ2に進むことなく,クレームは特許適格性があると判断し,地裁の決定を棄却した。

(丸山 佳彦)

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