専門委員会成果物

特許侵害者に関するsingle-entity ruleは,特許法271条(g)に適用されないと判示した事例

CAFC判決 2019年12月18日
Syngenta Crop Protection, LLC v. Willowood, LLC, et al.

[経緯]

 Syngenta Crop Protection, LLC(S社)は,防カビ剤に使用されるアゾキシストロビンの製造方法に関する米国特許5,847,138(’138特許)を含む,防カビ剤関連の4件の特許を保有する。S社は,同社の保有するこれらの特許を侵害したとして,Willowood, LLCらを地裁に提訴した。
 Willowood Limited(W-China社)は,香港の法人であり,アゾキシストロビンを中国サプライヤから購入し,オレゴン州を拠点とするWillowood USA, LLC(W-USA社)に防カビ剤として販売し,W-USA社がそれを米国内に輸入した。アゾキシストロビンは,’138特許でクレームされた工程のステップの実施により,中国において製造されたものであった。
 地裁は,特許法271条(g)は,クレームされた工程の全ステップが単一事業体(single-entity)によって実施されることを要求しているとし,W-USA社による特許法271条(g)における侵害は無いと判決した。S社は,特許271条(g)の要求に関する地裁の判決を不服として,CAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 特許法271条(g)は,「合衆国において特許された方法によって製造された製品を,合衆国に輸入し又は合衆国において販売の申出をし,販売し若しくは使用した場合において,当該人は,侵害者としての責めを負わなければならない。」と規定している。この条文は,特許法271条(g)における侵害者責任が発生する行為が,米国で特許された工程によって製造された製品を米国へ輸入等する行為であることを明確にしている。そして,特許された工程が海外において実施されることによって侵害者責任が発生することは何も示していない。従って,特許された工程を海外で実施しても特許法271条(g)の基づく侵害者責任を生じない為,その工程が単一事業者によって実施されたか否かは,この条文における侵害分析にとっては重要ではない。
 地裁は,単一事業体が特許された方法の全ステップを実施することを規定する特許法271条(a)の法理に基づき,特許法271条(g)も同様に,単一事業体要求を適用したが,これら2つの条文における侵害責任は別々のものである為,地裁の結論は誤りであると判示した。

(中易 信晃)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.