専門委員会成果物

二次的考慮における発明と商業的成功の関連性の証明には製品の本質的特徴がクレームされている必要があることを判示した事例

CAFC判決 2019年12月18日
FOX Factory, Inc. v. SRAM, LLC.

[経緯]

 SRAM, LLC(S社)は自転車のチェーン構造の改良に関する特許9,182,027(’027特許)を有している。そしてS社はX-Syncシリーズとして13種類の自転車のチェーンリングを製品として発売し,この13種類のうち12種類は’027特許に記載の構成を用いた製品であった。
 FOX Factory, Inc.(F社)は,’027特許に対して,2つの先行文献から自明であるとしてIPRを申請した。
 PTABは,’027特許の構成要件は2つの先行文献に全て開示されており,かつ当業者であれば,これらの2つの先行文献がいずれも自転車のチェーン保持を改善する技術として,2つの先行文献を組み合わせる動機付けもあるした。
 しかしながら,PTABは二次的考慮の分析において,S社が示した二次的考慮に関する証拠はクレームの特徴を実現し,製品とクレームが同一の広がりをもつため,クレームされた発明と製品は関連性を有するとした。そして,この製品の商業的成功は非自明である客観的な証拠であるとして,’027特許は非自明であるとした。
 この決定に対してF社は控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは以下の通りPTABは非自明性の判断を誤ったとして,差戻しを行った。
 まず,クレームされた発明と製品の関連性が推定されるのは特許権者が示した証拠が製品に結びついた時だけであるとした。
 そして,この結びつきは完全に一致したものである必要はないものの,ごく小さい一致,例えば商業的にした製品のごく一部の構成を特徴とするクレームされた発明は製品との間に関連性があるとは言えないとした。
 この関連性における,クレームされた発明と製品との対応の程度としては,製品の本質部分がクレームされた発明であることが必要,との基準を判示した。
 その上で上記基準を本件に当てはめると,本件の商品はクレームされていない大きな特徴を含むとした。具体的には,S社の製品であるX-Syncシリーズは’027特許の継続出願である9,1891,250(’250特許)の特徴を含むとした。
 そしてこれら2つの発明はそれぞれ別々の特許の特徴であり,’027特許はそのうちの1つの特許に過ぎないとした。1つのクレームされた発明がこれら2つの発明の構成要件の両方を含んでいれば製品とクレームに関連性があると推測できるが,’027特許は片方の特徴しか有しておらず,製品の本質部分がクレームされているとは言えないとした。
 そして,製品とクレームされた発明に関連性があるとは言えないとして,PTABの判断を破棄し,差戻しを行った。

(高見 亮次)

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